河川工学が専門の東京大学名誉教授の高橋さんが治水全般について考えをまとめたものです。
防災というと川の堤防をしっかり作る方ばかりに目が向きますが、本当はそうではなく土地の利用法自体を考えていかなければならないということで、どんなに高い堤防を作ってもそれ以上のものが来たらかえって避難を遅らせて犠牲者を出すというのは大震災の津波でかえって防潮堤が高かったところの方が被害が大きかったということで証明されました。
河川の治水工事も多くの費用を費やして全国で行ってきたことで小規模な水害というのは少なくなりましたが、流路整備などで水が一気に流れやすくなったことで、下流まで大量の水が流れ込みやすくなり、かえって下流部の大水害の可能性は高くなったそうです。温暖化のせいにして大水害が多くなったなどという浅薄な解説が横行しているなかで、実に説得力のある分析かと思います。
ダムもいろいろと問題になりますが、土砂の堆積の害は相当なもので、容量が少なくなることでかえって下流の洪水を起こした例もあり、また下流に土砂が流れないことで河口部の海岸の浸食がどこでも激しくなっていて影響が大きいようです。
自民党政府がまた土木政治復活に向け力を入れているようですが、本当に有効な防災とは何かということはしっかりと考えてもらいたいものです。