爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「食糧の帝国 食物が決定づけた文明の勃興と崩壊」エヴァン・フレイザー、アンドリュー・リマス著

現在はカナダのグエルフ大で准教授を務めるフレイザー氏がジャーナリストのリマス氏とともに書いた本です。
”食糧の帝国”とは、人類史上、すべての文明は余剰食糧のあるところにそれを用いて成立する食料システムであると言う観点から文明をそう呼んだものであり、またこれまでの文明は食糧生産が衰退するとともに衰えてしまった。
余剰食糧生産を産み出すには生産手段の発展と成立範囲の拡大が伴い、またその衰退には水の不足と土壌の劣化が関わってきた。これが現代文明においては究極の発展が続いており、なおかつその崩壊が巨大な破壊になるものと予測される理由になる。
以前の文明では農業手段の革命的発展により急激に生産効率が上がり文明成立がなされても、土壌栄養分の還元ができなかったために徐々に生産性が落ちその場所を変えざるを得なくなる。しかし現代文明では化学肥料の投与と言う手段がまだ有効であり、なんとか維持されている。また駄目になった農地(メソポタミアやギリシアなど)を捨てて隣に移っていくと言う手法も現在では全世界に溢れてしまった農地にはもはや代替地はない。
著者はこのような現代文明の脅威となる農業生産の弱点を少しでもカバーするためにはフェアトレード、有機農業、スローフードを選択することですこしでも破局を和らげることができるのではと提案している。