先週の豪雨で、危険な状態に達した鹿児島などでは、「全員避難」の避難指示や避難勧告が各地の自治体で出されました。
しかし、報道によると、鹿児島市でも全人口59万のうち、避難所に避難したのはわずか0.6%だけだったとして、問題視されています。
しかし、本当に、「全員避難」で避難所に全員が向かったらどういうことになるのか。
そんなことは、住民であれば誰でも簡単に想像できます。
避難所とされているのは、地区の公民館のような建物で、数百人も入ればもう一杯。
実際に、テレビ報道で避難所の様子として流されていたものでも、かなりの数の住民が避難していましたが、ほとんど横になることもできないほど混雑している様子でした。
全員避難であれば、その数十倍の人が押し寄せることになりますj.
ちなみに、私の住んでいる熊本県南の地方都市では、今回の豪雨では避難勧告も出ませんでしたが、もしものことを考え防災マップなどを参考に避難所の状況を調べてみました。
すると、私の住む校区に一次避難所は実質1箇所、公民館(今では名称は「コミュニティーセンター」としていますが、前と同じ建物です)だけです。
ところが、この地域の住人はこのところの住宅建設ラッシュで11500人を数えます。
公民館にいくら詰め込んでもせいぜい200人から300人程度でしょう。
あとの11000人以上はどうすればよいのでしょうか。
これについて、まとめているサイトがありました。
www.businessinsider.jp「ビジネス・インサイダー」というサイトに、西山里緒さんという方が書いています。
やはり、鹿児島の人でも全員が避難できる避難所はないと認識しているようです。
さらに、鹿児島市の担当者の言葉として、
災害救助などの業務を担う鹿児島市の地域福祉課によると、59万人に避難指示が出ているとはいえ、基本的に「自宅が安全だと感じる人は避難の必要はない」という。無理に避難所に移動することで、かえって危険な目に遭う可能性もあるからだ。
というものも出ています。
これが、まさにほとんどの人が感じていることだと思います。
ところが、避難勧告、避難指示は細かい地区の指定もなく「市内全域」といった形で出されてしまいます。
この点について、防災システム研究所の山村武彦所長(テレビで見たことがあります)は次のように語っています。
防災システム研究所の山村武彦所長は、この避難指示について「本来ならば、エリアを細かくしぼって(指示を)発表しないと意味がない」と苦言を呈する。「全域に指示を出したのは、いわば責任逃れ、アリバイ作りの側面も半分、あるのではないか」。
ここに、今回のような避難についての混乱の基があるのでしょう。
やはり、行政の責任逃れ体質が影響をしているようです。
ただし、危険な場所というのは間違いなく存在しており、がけ崩れや土石流などの起きる可能性がある場所ではたとえ昔から数百年崩れたことがなくてもいきなり崩れることがあるということは事実です。
そういった危険地域は速やかに避難することが必要で、しかもこの場合は2階建ての2階に逃げる程度のことでは被害を免れない危険性が大きいと考えられます。
問題は「河川の近く」をどうするかなのでしょう。
これには、昨年の西日本豪雨の際の岡山県倉敷市真備町の水害が大きく影響をしていると考えられます。
この地域で河川氾濫により51名もの犠牲者が出ました。
大雨による水害の被害といっても、最近は河川の堤防強化の成果もあり、堤防破壊による外水氾濫の被害というものは減ってきたのでしょう。
そのためか、それに対する警戒感が薄れていたというのが真備町の被害を大きくした要因だったと考えられます。
ただし、がけ崩れなどの土砂災害の危険地域はかなり絞り込むことができますが、河川氾濫、特に大きな川の場合はどこまでが危険かという線引きは難しくなります。
堤防の破堤箇所もその危険性がある場所は何か所もあるのでしょうが、それが少し違っただけで水の流れ方が大きく異なり、被害状況も変わってくるでしょう。
その危険性が大きければ、ある程度広い範囲に避難を呼びかける必要性はあります。
それでも、「市内全域」といった乱暴なことは混乱を招くものでしょう。
いずれにせよ、この問題には現状と災害の危険性を十分に考えた慎重な議論が必要です。
ここ数日のテレビ報道や新聞に溢れている「全員避難なのに、◯◯%しか避難しなかった」などという単純な数字の報道は何の役にも立ちません。