岩波新書の国立民族学博物館教授の西尾さんのアラビアンナイトに関する著書ですが、内容というよりは主にヨーロッパへの紹介と広がりを解説したものです。
バートン版というのは知っていましたが、ヨーロッパに初めて紹介されたのは1704年にフランス人のガランがフランス語で出版したもので、フランスではガラン版というのがいまだに読まれているようです。
その形も1001夜にわたる話として確立していたのではなく、それほど長くなく、最初はシンドバッドも含まれていなかったそうです。その後、いろいろと話が付け足されて形が作られたとのことで、元々はっきりとした形はなかったようです。
その後、性的なアイディアを強調した話も取り入れられていきました。アラビアの物語としてそれ自体成立していたものではなく、ヨーロッパの関わりで出来上がっていったという点が強いようです。
日本にはヨーロッパからの紹介として、ヨーロッパのオリエンタリズムをそのまま取り入れる形で入ってきました。アラブ世界の実像とはかなり異なるものと考えた方がよさそうです。