爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「Jポップとは何か」鳥賀陽弘道著


1960年代から自分の好みで音楽を聴き始めた自分にとって、音楽界の趨勢というものが何かもやもやしたものを感じ続けていましたが、この本で相当すっきりとした観があります。

Jポップという言葉ができたのは1988年のことだそうです。当時はバブル全盛で、ちょうどできたFMのJWAVE(これも記憶に鮮明です)で日本製の曲をかけるコーナーにするためにJポップと言う名称を考えたようです。
サッカーのJリーグが始まった頃でもあります。

しかし、ちょうどそれに先立って音楽装置の大変革が起きていました。それまでのレコードに代わってCDプレイヤー化が急速に進展しました。それは価格の急低下でもあり、その結果音楽を楽しむ年齢層も低下しました。
これも自分の記憶にまだ残っているところです。高校生の頃、親にねだってレコードプレーヤーを買ってもらうのは大変な苦労でした。大学になりステレオを買ってもらった時は天にも昇る気持ちとでもいえるほどでした。
しかし、それから程なくCDプレイヤーやミニコンポなどが出てくると値段も大したものではなくなりました。

これは音楽制作者側が購買者層としてそれまでの中高年男性から青少年にターゲットを変えた理由でもあります。演歌・歌謡曲が劇的に没落し、Jポップへの転換が進みました。

また、CM、テレビドラマとのタイアップが集中して起こるようになりました。これも記憶に新しいもので、なおかつその当時はすでに自分は大人に成りきっていましたのでその傾向を苦々しく感じたという記憶もあります。

著者が強調している点は、Jポップは海外への発展性が全くないということです。多くの人が感じているように、日本の楽曲はほとんど海外では売れていません。あまりに日本国内のマーケットが大きすぎるために無理に海外で売る必要がないためだそうです。

しかし、90年代のJポップバブルとも言える好調ぶりはその後劇的に凋落してしまいました。業界はその原因を違法ダウンロードや輸入激安CDなどに転嫁し、上手く擦り寄った政界に働きかけて法律で制限しましたが、実際は曲作りの内容が相当問題ということで、これには全く同感です。

この本は2005年の著作ですが、それ以降現在の音楽界はAKBなど女の子グループ全盛です。プロデューサーだけが活躍しているとも言える状態です。著者の最近の思いはどうでしょうか。