爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

”賀茂川耕助のブログ”を読んで No.1208 人民元の基軸通貨化

賀茂川耕助のブログ」によれば、米ドルの基軸通貨としての地位を脅かすような中国人民元の攻勢が続いているようです。

kamogawakosuke.info

米ドルが基軸通貨として世界を支配しているように感じていましたが、それはせいぜい1970年代からだったようです。

そこにも石油取引の決算が関わっていたようで、これがあくまでも石油経済であったということが分かります。

 

しかし、中国の世界中への経済進出というものは急激であり、さらにロシアもそれに同調する動きを見せているようで、いくらトランプが偉大なアメリカと言ったとしても実質が付いていかなければどうしようもありません。

 

一方でアメリカ国債を最も多く保有しているのも中国ですから、一気にアメリカと地位逆転というわけにも行かないでしょうが、大きく見れば世界の貿易の仕組みと国際金融制度を大きく変えるというのは、賀茂川さんの指摘通りでしょう。

 

それにもかかわらず、代替案の考慮すら無くアメリカ一辺倒の追従政策を取り続ける日本がいかに危うい立場か。

そんなに心中しても良いというくらいにアメリカに優遇されていたのでしょうか。

 

「古代遺跡を楽しむ本」吉村作治著

著名な考古学者の吉村さんが、世界各国の古代遺跡を紹介するという本で、一箇所ごとにその場所の思い出と行き方、注意などがガイドブック風に付けられているものです。

 

まあこういった旅行ガイドに一々文句を言っていてもしょうがないのですが、ちょっと気になるところも数々あります。

2000年出版という本でありながら1997年に起きたルクソール事件(イスラム過激派が観光客を襲った事件で日本人も多数が死傷)について何も触れられていないのは何事でしょうか。

 

一応、本の中には旅行の危険性も書かれていますが、それも通り一遍の「強盗、置き引きに注意」と言った程度のものです。

「観光客を狙ったテロ」というものも現在の世界では非常に重要な問題ですので、知識の不足した人々に夢を与えるだけでは危険極まりないと言うべきでしょう。

 

また、トロイの遺跡については、最近その専門家の著書を読み、シュリーマンの発掘姿勢やその結論などについて批判的な意見も目にしました。

sohujojo.hatenablog.com一言で言って、シュリーマンがこの遺跡をトロイアと考えた根拠も薄弱であり、発掘技法も拙劣であったというものだったのですが、吉村先生も考古学専門であるならこういった情報についてまったく知らないはずもないのに、通俗的な「夢を叶えたシュリーマン」という紹介に終わっています。

 

その他の遺跡についてはそれ以上の情報もなく、判断できるものはありませんが、どうも書いてある全てを信じるべきかどうか、迷ってしまうようなものでした。

 

 

あまりにも寒い

日本中が大寒波に覆われ、日本海側の大雪、首都圏でも大雪と大変な状況です。

寒さには慣れていると思っていた新潟県でも佐渡で水道管破裂が相次ぎ断水とか。

 

九州でも毎日とんでもない寒さで、今日も昼前になっても温度が上がらず、我が家も二階の書斎は暖房なしのために居続けることがかなわずたまらずに居間のこたつに避難しております。

 

そんな状況なのにちょっと前のニュースでは「観測史上2番目の高温だった」とか報じられ、なんじゃこりゃと思ったものですが、近藤邦明さんのサイト「環境問題を考える」にそれについての記事が載っていました。

http://www.env01.net/fromadmin/contents/2018/2018_01.html#n1214

 

「観測史上」なんて言ってもせいぜい100年、まともな記録があるのは第2次大戦の後だけですから大したものじゃないということです。

 

それよりも、信頼置ける解析によればやはり徐々に寒冷化が進んでいるようです。

氷河期が明けて古代文明が各地で興った頃がやはり最高の高温期であり、そこから再び気温は下降しつつあるようです。

 

もちろん、多少の温暖化よりは寒冷化の方がはるかに人類社会にとっては危険なことは言うまでもありません。

この圧倒的な寒冷化の脅威の中でもまだ「温暖化によって寒冷化している」などということを唱える人々もいますが、そういう連中は放っておいて、真剣に寒冷化対策をしておく必要があるのかもしれません。

「”アレ”はなぜ合法なのか?」間川清著

社会の隅々まで法律で決まっていることが多いのですが、意外に一般の人々はそういった法律について知らないことが多いようです。

弁護士の間川さんが、様々な事例について法律の本当のところはどうなのか、分かりやすく解説をした本です。

 

法律に関する「都市伝説」とでも呼べるような話が流布しています。

たとえば、「飲酒運転をしていても、捕まったその場で酒を飲めば許される」なんていう話がまことしやかに語られます。

実は、このようなことをしても意味が無いどころか、非常に心証を悪くするのです。

飲酒運転をしたかどうかはその場のアルコール濃度だけで決まるわけではなく、その場での警察官による判断や、直前の行動の取り調べなどで総合的に判断されます。

当然のことながら、「なぜその場で酒を飲んだか」ということも判断の根拠にされるので、全く逆効果になります。

 

芸能人やスポーツ選手の結婚、離婚、不倫などの話題が溢れていますが、離婚したあとの子供の養育費や慰謝料などは非常に高額になる場合があるようです。

これも法律で決まっているわけではないのですが、裁判や調停などでは収入に応じた金額が決まることになるので、高額所得者の場合はとんでもない金額になることもあるようです。

 

少し前に、ある男性アイドルが夜中の公園で全裸になったという事件がありました。

誰も見ていないような真夜中の公園で裸になっても「公然わいせつ罪」になるのかという疑問がわきますが、「不特定多数が認識しうる状態」ならば成立するそうです。

逆に、限られた人が出席する宴会の席で裸踊りをしても「不特定多数」ではなく「特定少数」なので実際に裸になって踊っても「公然わいせつ」ではないということになります。

 

合法ドラッグ」なるものが売られているがこれは犯罪ではないのかという問題になりますが、あくまでも法律で禁止されている薬物でなければ現状では「合法」と言わざるを得ません。

法律には書いていないけれど、麻薬と同じような作用をするから取り締まれということはできません。

それは、日本が「罪刑法定主義」を取っているからです。

したがって、取り締まれない物質が出回ればすぐに法律を改正する必要があるのですが、なかなか追いつかないのが実状です。

 

法律というのは確かに社会の基本と言えるのですが、詳しくは知らないというのが普通かもしれません。やはり知っておく方が良いのでしょう。

 

「アレ」はなぜ合法なのか?

「アレ」はなぜ合法なのか?

 
「アレ」はなぜ合法なのか? (経済界新書)

「アレ」はなぜ合法なのか? (経済界新書)

 

 

「おにぎりはどの角から食べるのがマナーですか?」吉野椰枝子著

書名からはどのような内容なのか分かりにくいのですが、副題の「ホームステイ外国人のニッポンびっくり体験」を見ればすぐに分かります。

 

著者の吉野さんは、豊富な英語体験を活かし、日本語教師としての資格も持ちながら、家庭でホームステイの外国人を受け入れ、さらにその人達に日本語を教えるということもされているということです。

そのような生徒さん(ほとんどは若者のようです)の日本生活でのエピソードをあれこれと書き連ねています。

 

日本語を覚えたいと少し長めのホームステイ(だいたい2-3週間というのが多いそうです)をしに来るという人たちは、日本のアニメやマンガに興味を覚えてということが多いようです。

まあきっかけはともあれ、日本の生活や社会に触れてもらえるのは有益なことでしょう。

 

吉野さんもホームステイではできるだけ普通の日本の生活というものを経験させようとしているようです。

そのため、食事もあまり構えたものではなく現代の普通の食生活を体験させようとしていますが、やはりヨーロッパの人たちには魚中心の食事や馴染みのないもののようで、手を付けない料理というものも結構ありそうで、中には出された食事ではあまり満足できずに近くの店でパンを買ってきてジャムを付けて食べていた跡が残っていた人もいたとか。

 

ほとんどが初めての訪日という若者たちで、日本社会というものも初めてのことばかりですが、書名にもなっている「おにぎりはどこの角から食べるのか」というのも彼らの発した質問です。

他にも「ポッキーはどうやって食べるのがマナーか」とか、「自転車に乗っている人が多いのに驚き、止める時に簡単なロックしかしないのにも驚く」といったところに発見をしているようです。

 

外国人が日本語を覚えようとする時に難しいのは「カタカナ語」のようです。

外来語を表すのにカタカナ表記ということが多いのですが、その発音が原語とははるかに離れているために、上級者でも難しいとか。

外国人が??と思うベスト4は、1.ガール、2.ユーモア、3.チーム、4.プリンだそうです。

 

数多くの若者たちを見てきた著者が、日本語上達の進度が速い人に共通の性格として、「日本食を食べようと努力する人は日本語上達も速い」と言えるそうです。

やはりなんでもチャレンジしてみようとする人はその能力も高いようです。

 

なお、ちょっと笑えないエピソードとしては、フランス人の若者が家の中で話をしていた時に、隣の家で「布団たたき」を始めたのですが、急に顔色を変えて逃げ出そうとしたそうです。

実は「テロかと思った」のだそうです。そこまで状況が悪化しているのかと感じました。

 

こういった交流が深まるほど良いのでしょう。

 

おにぎりはどの角から食べるのがマナーですか?―ホームステイ外国人のニッポンびっくり体験

おにぎりはどの角から食べるのがマナーですか?―ホームステイ外国人のニッポンびっくり体験

 

 

「日本 喪失と再起の物語」デイビッド・ピリング著

著者のピリングさんはフィナンシャル・タイムズ紙のアジア編集長ということで、2001年から2008年まで東京支局長を務めました。

また、東日本大震災の直後には被災地に入り、取材を続けたそうです。

 

非常に数多くの人々に話を聞き、また様々な資料を調べ、日本および日本人についての本を書くこととなりました。

大震災とそこからの復興というのも一つのテーマですが、それだけでなく幕末明治の開国と富国強兵、太平洋戦争敗戦とそこからの戦後復興、高度経済成長とバブル崩壊後のデフレなどについても記されています。

 

やはりこの本は欧米読者向けであろうと思いますが、彼らの日本および日本人観の誤りというものの指摘もあり、また日本人が持ちやすい誤解についても記されています。

 

非常に多くのテーマを扱っていますが、どれも間違いのない記述であろうと思います。ただし、あくまでも正統派、多数派の解釈によるもののようです。

 

したがって、私のようなひねくれ者から見るとちょっと物足りない記述に終始しているようにも見えます。

 

いくつか気の利いた記述を書き留めておきます。

 

日本は「脱亜」には成功したものの、「入欧」すなわち植民地主義国家として成功することには無残なまでに失敗した。この国がいまだに外の世界とうまく関係を結べないのはこの歴史的経緯と深い関係がある。

「西欧クラブ」の一員になろうとして失敗したために日本は外交的に宙ぶらりんの状態に置かれ、しかもかつて征服しようと試みた反日感情の強い隣国に囲まれている。

だからアメリカの属国としての立場しかないのでしょうか。

 

日本経済に新たな活力を吹き込むには他にも様々な方策が考えられたはずだが、既得権を守るためにことごとく退けられた。

日本に必要なのは市場開放と規制緩和であり、電力、看護、保育、農業、漁業、林業などの分野に必要だがまったく手を付けられていない。

この部分は重要な問題ですが、市場開放と規制緩和も方向違いになれば害毒だけでしょう。

 

この本は上下2巻のうちの上巻ですが、下巻は読む気が起きませんでし

  

 

日本‐喪失と再起の物語:黒船、敗戦、そして3・11 (下) (ハヤカワ文庫NF)

日本‐喪失と再起の物語:黒船、敗戦、そして3・11 (下) (ハヤカワ文庫NF)

 
日本‐喪失と再起の物語:黒船、敗戦、そして3・11 (上) (ハヤカワ文庫NF)

日本‐喪失と再起の物語:黒船、敗戦、そして3・11 (上) (ハヤカワ文庫NF)

 

 

 

 

 

ダボス会議開催中

ダボス会議が開催中。トランプ大統領が参加とかニュースになっています。

www.newsweekjapan.jp

最近読んだスーザン・ジョージさんの本に「ダボス階級」という言葉が使われていて、面白いと思ったのでここで使っておきましょう。

sohujojo.hatenablog.com

ダボス会議に出てくるような連中が「ダボス階級」ということです。

言ってみれば、今日の政財界を牛耳っている連中、すなわち最悪の階級です。

 

顔ぶれを見れば、投資会社の幹部であったり、アメリカの銀行総裁であったり、そしてついでながら日本銀行総裁であったり(まあ犯罪性が高いという意味では同列ですが)

そういったのがダボス階級だと思えば理解しやすいでしょう。

 

彼らが「経済リスク」がああだこうだと言っているようですが、私の考えでは

 

「お前らが一番のリスクだ」

 

です。