爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「日本の火山 ウォーキングガイド」火山防災推進機構編

著者は特定非営利活動法人火山防災推進機構のメンバーで、各火山の研究者が主ということです。

そのため、各地の火山をできるだけ歩いて見てもらいたいと思いながらも、決して事故があってはいけないということから諸注意もあちこちに書かれています。

 

全国の22箇所の火山を、できるだけ徒歩で見て回るという趣旨で、かなり細かな道筋から火山の見どころ、知らずに見たら見過ごしてしまうような火山独特の地形など、火山の好きな人が実際に持って回るには都合よくできたガイドブックですが、行こうとまでは思わない人でも読んだだけで見たような気分になれるというものでもあります。

 

ただし、どうしても火山活動が盛んな地域が取り上げられているためか、北海道、東北と関東周辺、それに九州の火山は数多くありますが、中部・近畿・四国はありませんでした。(富士山や浅間は中部周辺、神鍋山は兵庫県ですが)

 

それにしても、こういった有名火山を見回してみるとそのほとんどが主要な観光地であると言えます。

それだけ、火山というものが日本の風景を形作っているということでしょう。

 

私もこれまでに、本書に取り上げられている22箇所の中で、上まで登って火口近くまで見たのが、草津白根山箱根山阿蘇山雲仙普賢岳、そして周辺近くまで観光で回ったのが、富士山、伊豆東部火山群、浅間山鶴見岳九重山霧島山姶良カルデラ桜島とありました。

 

草津白根山などは高校時代に火口近くまで上がり池の光景も見たのですが、本書によれば現在は火山活動が活発で火口はおろかかなり離れたところまでしか入れないようです。

 

北海道駒ケ岳はこれまでの噴火活動はほとんど前触れなしに突然起きてしまったようです。

この本の記述に惹かれて出かけるにしても、細心の注視を払って行ってほしいものです。

 

日本の火山ウォーキングガイド

日本の火山ウォーキングガイド

 

 

「内田樹の研究室」より サンデー毎日ボツ原稿北朝鮮と安倍政権

内田樹さんのブログが面白くいろいろと読ませていただいています。

これは最近のものから、「サンデー毎日」に掲載予定で9月中旬に書き上げて10月初めに出版予定だったのですが、衆議院解散などですっかり空気が変わってしまいボツにしたものだそうです。

 

取り上げた内容は、北朝鮮に対する安倍政権の姿勢。

 

これについては私のブログでも色々と書いてきました。

例えば9月16日づけでは次のようなものを上げています。

sohujojo.hatenablog.com内田さんの記事もほぼ同じ時期に書かれていますので、雰囲気としては同様でしょうか。

こちらは「サンデー毎日」没原稿 (内田樹の研究室)

 

やはり安倍政権の強硬な北朝鮮制裁強化の姿勢があまりにも異様なほどであり、その裏側にある心理を考えてみたのでは同じようなものですが、内田さんと私とでは違うところもありそうです。

 

私は、この強硬姿勢はあくまでも日本人向けのポーズであり、それによりモリカケ問題などへの追求を緩め、危機感を煽って内閣支持率向上を目指すものであり、裏では決して戦争勃発の危険性はほぼ無いことを信じられる理由(アメリカの意図など)があるからこそのものであろうと思っていました。

 

しかし、内田さんの意見はさらにその上を行くものでした。

安倍首相は北朝鮮への圧力の行使にはたいへん熱心だが、「全力を挙げて戦争を回避する」ということは口にしない。

安倍首相は本気で「戦争をする気でいる」。だから、そのための環境づくりにたいへん熱心なのである。彼が続く内政面での失敗にもかかわらず、いまだに高い支持率を誇っているのは、彼の好戦的な構えを好感する有権者がそれだけ多いからである。

そして、その割には戦争勃発の危険性があってもその被害についてはほとんど考えてもいない。

それは、戦争によって犠牲者が出ればさらに政権への支持率が上がるからだとしています。

これには9.11のブッシュ、フォークランド紛争でのサッチャーといった前例がありました。

いかにひどい指導者であっても戦争などが起きれば支持率は上がるという。

 

内田さんの記事はさらに深いところに進みます。

安倍の狙いは「戦争をできる国」に日本をすることだとしています。

そして、その「戦争をする相手」は北朝鮮や中国だけに限らず、実は「アメリカ」も含んでいるということです。

今は確かにアメリカに完全隷従の態度を示し、「アメリカとともに戦う」国に日本を持ってきた。しかし、彼らの本当の狙いは「アメリカとも戦う」国にしてしまおうということだということです。

 

ここまでは、ちょっと言い過ぎのようにも思えます。内田さんも少し安倍を買いかぶり過ぎているのでは。

彼に本気でアメリカに逆らう意志があるとは思えないんですが。

とはいえ、非常に参考になる意見でした。

 

FOOCOM.NET専門家コラムより、「食品添加物リン酸塩はどれくらい危ないの」森田満樹さん

いつものネタ元、FOOCOM.NETの専門家コラムで森田満樹さんが恒例のマスコミの食品添加物叩き、「リン酸塩」について書かれています。

www.foocom.net

食品添加物が危ないというのは時折出て来る論説ですが、政局も落ち着いてしまい他に記事のネタがなくなったのでしょうか。

 

記事中にもあるように、食品添加物「リン酸塩」はハムなどの結着剤、乳化剤、PH調整剤等々、様々な用途で使われていますが、そもそも食品そのものにも多く含まれている成分です。

豆類や魚類に多いようですが、他の食品にも含まれています。

 

リンの最大耐容一日摂取量(MTDI)は体重1kg当たりの量で70mg/kg体重/日、これは体重50kgの人で3,500mgに当たります。(3.5gのこと)

 

ここで間違えないでほしいのは、MTDIの値を「越えたら害が出る」ということではないということです。

最大耐容一日摂取量とは、「摂取し続けても健康への悪影響がないと推定される一日当たりの量」で、過剰摂取で有害な影響が出るという量よりははるかに低い値です。

 

実際に人々が摂取していると考えられるリン量は、厚生労働省の調査結果によると、

 2013年度調査結果

 を見ると、総リン酸塩類のリンとしての一日摂取量は、265.6mg(20歳以上の平均値)と見積もられています。この量は、食品由来のリンの平均摂取量(男性1063mg、女性で925mg)よりも、少ない量です。ここに加算しても、耐容上限量の3000mg/日までにはかなり余裕があります。

 つまり、人々の一日あたり摂取量はリンとしてだいたい1000mg程度であり、そのうちの食品添加物由来の量は265mgであるということになります。

 

記事の最後には、

週刊現代の記事では、サンドイッチのハムをリン酸塩不使用して取り組んでいる大手コンビニの事例を紹介して「消費者の健康を気遣い、リン酸塩を減らそうとしている企業があるのも事実だ」とほめています。しかし、サンドイッチのハム1枚をリン酸塩不使用にすることで、1日のリン摂取の減少量はどの程度か、その点も冷静に判断したいものです。」

相も変わらず、大したこともない事例に「取り組んでいます」というポーズを見せて消費者に媚びる企業が出ているようです。それに簡単に騙される週刊誌記者も科学知識の程度があまりにも情けないようです。

 

食品のリスクは「ハザード(危害)×量」で決まります。

このことをきちんと考えてもらいたいものです。

 

「教科書では学べない世界史のディープな人々」鶴岡聡著

著者の鶴岡さんは歴史の専門の研究者というわけではなく、塾の講師などをされているようですが、この本で取り上げられている人々はあまり有名であるわけではないものの、こうやってその人生を描くとそれぞれがまた独自の輝きを持つように思えます。

 

「あまり有名ではない人々」と書きましたが、中ではハンニバルダヌンツィオ、ガロワ、ピエール・キュリーはそう言っては申し訳ないかもしれません。

 

しかし、1170年にカンタベリー大聖堂で4人の騎士に惨殺された大司教トマス・ベケットなどという人の名は私も初めて聞きました。

プランタジネット朝の祖ヘンリー2世の腹心であったベケットは王と仲違いをしたために、王の意志を忖度した騎士たちによって暗殺されました。

まだ十分に勢力の強かったローマ教皇はトマス・ベケットをすぐさま聖人に列し、型ベリーは巡礼の地として栄えることになります。

チョーサーの「カンタベリー物語」もその巡礼たちを描いたものです。

 

19世紀末のフランス第3共和制は弱体化と腐敗で危機的状況だったのですが、そこで急速に力を得たのがジョルジュ・ブーランジェでした。

陸軍大臣に就任した彼は政府改革を進め、旧王室関係者の排除に成功します。

ブーランジェの人気は上昇し、国家元首に推挙する動きも強くなりました。

このまま行けばナポレオンのように皇帝就任もあり得たかもしれません。

しかし反対派のギリギリの攻防で反逆者と認定されてしまいます。

もう少し押すべきタイミングを掴んでいれば。

 

サッカーの試合が戦争にまで及んでしまったとして有名な、1969年のホンジュラスエルサルバドルとの間のワールドカップ予選と、その後の戦争ですが、やはりあくまでもサッカーはそのきっかけに過ぎず、それ以前に植民地時代からの大農園経営と、そこから逃れた農民たちの不法移民化をいった問題が根底にあり、どちらの国民にもその矛盾が重くのしかかっていたためでした。

サッカー戦争」と呼ばれますが、その本質を見逃せば誤った観念を持つかもしれません。

 

やはり、有名であろうが無名であろうが誰もが精一杯人生を送ってきたということなんでしょう。

 

 

内田樹さんの研究室より、「大学教育は生き残れるのか」

内田さんはこれまでも何冊かの著書を読み、その論旨には共感を感じることが多い方です。

ご本人が書かれているブログ「内田樹の研究室」も興味深い内容が多く、教えられることばかりですが、この11月3日付の記事「大学教育は生き残れるのか」も面白いものでした。

大学教育は生き延びられるのか? (内田樹の研究室)

冒頭の挨拶の部分から見ると、国立大学の教養教育担当者の方々を対象とした講演会での議事録のようです。

相手が当事者のような聴衆ですから、相当踏み込んだ議論となっています。

 

まあ結論を先に言えば、「大学教育は生き残れない」ということでしょう。

医療崩壊がすでに10年ほど前に進行し、現状は医師や看護師の方々の献身的な努力のみで存続していると言えるようなのですが、それを大学も追いかけていって同じ状況になり、犠牲的な献身を行う関係者の努力だけで持たせられる存在になりそうです。

 

「人口あたりの論文数は先進国最低」という事実が示すように、日本の大学のレベルは低下し続けています。

「教育に対する公的支出の比率」も先進国最低です。

しかもその限られた予算を取り合いさせるかのような競争原理導入で、形だけの評価というものがますます学校の実力を奪っています。

 

その評価基準の明確化(予算の取り合いですから皆が納得できるものにしなければなりません)から出てきたのが「グローバル化度による評価」ですが、これが高いからといってどうにもならないという、非常にくだらない基準のようです。

留学者数、外国人教員数、在学者の留学、等々数字になりやすいものばかりですが、それを達成したからと言って学校のレベルが上がるはずもありません。

今はどこの大学でも学生に「1年間の留学義務付け」なるものが行われるようになってしまいました。

学生からは授業料を徴収しておいて、授業は海外の大学に丸投げして、先方が請求してくる授業料との「さや」を取る。何もしないで金が入ってくるのですから、大学としては笑いが止まらない。25%の学生が不在なのですから、光熱費もかからない、トイレットペーパーの消費量も減る、教職員もその分削減できる。いいことづくめです。

というひどい状況です。

これが行き着く先は、

そのうち「いっそ2年間海外留学必須にしたらどうか」と言い出す知恵者が出てくるでしょう。さらにコストカットが進んで利益が出る。すると誰かさらに知恵のある者が「いっそ4年間海外留学必須にしたらどうか」と言い出すかもしれない。そうしたら校舎も要らないし、教職員も要らない。管理コストはゼロになる。でも、そのときは大学ももう存在しない。

ということになるのかもしれません。

 

「このまま行けば大学教育は亡びる」という危機感が強く感じられる内容でした。

 

 

これが一番やりたかったのね。アメリカの兵器購入。

世界でも稀に見るようなトランプ歓迎の中で、F35やイージスアショアなど、高価なおもちゃをアメリカから購入することをあたかも当然のことのように発表しています。

www.asahi.com

上記記事には、自分たちの取り分だと思っていた軍事費をアメリカに掠め取られそうになった日本の兵器産業(もう「防衛産業」なんて言わないでね)各社が慌てている様子が見えます。

まあ、それらの会社に同情する気もありませんが。

 

それにしても、トランプの過激発言とそれのお先棒を担いで国民の安全を脅かした安倍発言で、北朝鮮情勢を悪化させてきた狙いがここにあったということが、はっきりわかりました。

まあなんと、回りくどいことをしたもんだ。

初めから「アメリカに貢ぎます」といって買ったんではさすがに馬鹿な日本人も反対すると思ったのでしょうか。

 

この兵器購入に何千億円かけるのかは分かりませんが、一方では早くも財政理由に公約を踏みにじっています。

https://mainichi.jp/senkyo/articles/20171107/k00/00e/010/265000c

幼児教育無償化という「重いはずの」公約などすぐに無かったことにして、認可外施設は除外とか。

戦闘機1機で何万人分の子供の保育料が吹っ飛ぶことか。

 

あの口ばかりはアメリカファーストのトランプに簡単に騙されたアメリカの有権者は限りなく愚かですが、それ以上なのが日本なのかもしれません。

 

「”科学的”って何だ!」松井孝典、南伸坊著

科学全般を誰にも分かりやすく説明しようとして、科学にはまったく素人と見える有名人と、科学者とが対談をして行くという、よくある作りの本です。

 

素人として出場してきているのが、イラストレーターの南伸坊さん。

科学者の方が、東大の惑星物理学の教授の松井さんということです。

 

導入部は「血液型性格判断」がなぜ科学的ではないかということから始められています。

これは「科学的には無意味」であることは明らかですが、そこをいかに素人にも分かりやすく説明するかということで科学者の力量が問われます。

「性格というものは脳の中のニューロンの回路の接続の仕方の話なので、血液中のある物質の型がどうこうということが関係あるはずがない」という論理で言い切っていますが、これで「誰にでも判る」かどうかは知りません。

 

その後は松井さんの専門分野である物理について、時間旅行や宇宙の果て、ブラックホールなど、物理学とSF小説の狭間のようなところを取り上げていきます。

 

また、日本の現状について、不合理がまかり通る社会になってしまっているという認識から学校教育の失敗についても言及しています。

理数系はやはり我慢して勉強することが必要ということです。

 

読み終えても、あまり「判ったような気にさせてくれない」ように感じました。

 

「科学的」って何だ! (ちくまプリマー新書)

「科学的」って何だ! (ちくまプリマー新書)