2020年がスタートしました。
「東京2020」でオリンピックのことばかりがクローズアップされますが、考えてみれば「2020年代」が開始ということでもあります。
この10年がどうなるか、まあおそらくこれくらいは身体も持ちそうですから、その行く末は目にすることができるでしょうし、その次には何とか入れるでしょう。その次は無理かもしれません。
目次
1.2050年とは
2.現在の一次エネルギー供給比率
3.現在のエネルギー消費様態
4.電力だけに頼ることはできるか。
5.再生可能エネルギーとしての電力供給は可能か
6.それではどうすればよいのか
1.2050年とは
さて、こういった長い目で見ていくと「2050年」などという年もあっという間に来るのかもしれません。
去年の終わりになって、この年についてあちこちで語られるようになりました。
「2050年までに化石燃料を100%使わないようにする」という宣言を出す人々が増えていました。
mainichi.jp欧米諸国でこのような宣言をする国が出ており、それに日本は国としては対応していませんが、それではいけないと思ってかどうか、地方自治体で方針表明だけはするというところが出ています。
まあ、そんな先まで自分が政治に当たっているはずもなく、言うだけは言っておいたほうがカッコよいと思ってのことでしょうが、さてどうでしょうか。
2.現在の一次エネルギー供給比率
我が国の現在の一次エネルギーの比率では、石炭石油天然ガスという化石燃料が89%を占めています。(2017年)
これを0にしようというのですから、よほどの見通しとやる気がなければ不可能でしょう。
言うだけ言った31自治体の人々が何をやろうというのでしょうか。
おそらくは「再生可能エネルギーで置き換える」とか言うのでしょうが、それは極めて困難なことだということは何度もここで書いています。
3.現在のエネルギー消費様態
それでは、エネルギー消費の状況はどういったものでしょうか。
www.enecho.meti.go.jp資源エネルギー庁の報告ですが、分かりやすくまとまっているとは言えないようです。
しかし、大まかに言って、電力としての消費、熱源としての消費、自動車等の燃料としての消費に大別されそうです。
さらに、エネルギー源としての消費ではないのですが、石油をプラスチック製造などの原料として使用する場合もありますが、これもエネルギー需給とは言えないものの重要なものです。
勘違いをしそうですが、「オール電化住宅」などというものが増え続けているために電力さえあれば良いような感覚を持つ人も多いかもしれませんが、これは現段階では非常に無駄の多いことになります。
実際には多くの工場などでは熱源として石炭石油の燃焼を用い、自動車や飛行機などの燃料には石油由来のものが直接使用されています。
このようなところには、いくら電力を供給しても使いにくいものであり、今のままの工場や機械の構成では対応できません。
4.電力だけに頼ることはできるか。
現代の発電でほとんどを占める火力発電では、石炭や天然ガスなどの燃焼により蒸気を発生させそれでタービンを回し、そこに発電機を組み込むことで電磁誘導作用で電力に変換するということをしています。
熱エネルギー、運動エネルギー、電気エネルギーと形を変えていくたびに一定の割合で効率が落ちるので、発電所全体では40%程度となっています。
天然ガスの火力発電では50%と効率が上げられており、今後の技術開発でさらに効率は高まると上記引用記事では紹介されていますが、それでも半分近くは熱が捨てられていることになります。
これは実は「逆の場合」も言えることです。
電力だけが供給された場合を考えてみると、それでも熱源や自動車燃料は必要です。
「オール電化住宅」などの例から、電気温水器を備えてさらに電気自動車を利用すれば大丈夫と言えるでしょうか。
ここにまた「エネルギー変換効率」の問題が持ち上がります。
温水器で水を温めるためには電気をヒーターに通して熱を発生させ、それを水に伝えなければなりません。
効率はかなり上がっているのでしょうが、それでも100%にはなるはずもなく、ある程度のエネルギーが失われます。
電気自動車の充電という工程も、電気エネルギーを化学エネルギーに変換させて蓄積していますので、効率には限界があります。
なお、人類は火を手に入れてから加熱調理と言う技術を開発し、食べることができる物質を大幅に増やしました。
加熱しなければ穀物などは食用とすることはできません。
このような人類繁栄の時代は迎えることができませんでした。
しかし、熱源を得るということは難しいことであり、周囲の森林をすべて燃やしてしまって衰退した文明がいくつもあります。
他の何にもエネルギーが使えなくなっても、食事の調理には絶対に熱源が必要ということだけは覚えておかなければなりません。
5.再生可能エネルギーとしての電力供給は可能か
このような「オール電化住宅」の発展型で「オール電化国家」が本当に可能でしょうか。
その電力供給の元としては風力発電や太陽光発電を使うということなのでしょうが、これも何度も言っていますが、非常に薄いエネルギー存在のものを集めて使用可能なエネルギー、すなわち100v程度の電力とするために、装置も大規模にしなければなりません。
その装置の製造にかかる費用も、エネルギーも大量になります。
そこが「本当に全部を”再生可能エネルギー”にしたらコストが合わない」ということです。
しかも、それがさらに現在では電気を使っていない工業分野、運輸分野にまで電力使用が広がっていったとすると、それをすべて賄うことは不可能だということです。
6.それではどうすればよいのか
以上のように述べましたが、私が「2050年化石燃料全廃」に反対かというと、全く違います。
これも何度も書いていますが、「即時、化石燃料使用停止」と主張しています。
つまり、社会や生活を大変革しエネルギーを極力使わないものに変えていかなければ人類の将来は無いということを言っています。
これは、グレタ嬢など全く及ばないほどの強硬な主張です。
しかもそれは「温暖化」などを理由に持ち出すといった迂遠な話ではなく、欲望だらけの人間の闘争というものが引き起こされ、大戦争で人類文明終焉ということもあり得ると言うことを見越した話です。
(「エネルギー文明論」として書いている記事を参照してください。)