中国人貿易商の子として日本で生まれ、家庭では中国人としての教育を受けながら、学校教育は日本人として受け、日中両方の教養を深く身につけた陳舜臣さんは、その後小説家、著述家として数多くの本を出版されました。
最初の頃は推理小説などが多かったようですが、その後、随筆も多く書くようになりました。
本書は新書版は1978年出版ですが、元々の単行本は1971年、長編の随筆集としては著者の最初の作品だそうです。
内容は、著者が精通している中国文化と、日本文化の比較、特に相違点に着目したものです。
これにはやはり戦前の日本が、中国大陸を侵略するにあたり、「同文同種」とことさらに唱えてそれの口実としたということがあり、陳さんとしてはその「違う所」を強調しておきたいという思いがあったのでしょうか。
数多くの事例をあげていますが、大きなものでは「日本は尊血主義」(つまり血統優先)「中国は人間信頼の”形式主義”」というところでしょう。
やはり、日本の血統主義というのは目立っていたようです。
相違点はあれど、隣人として長短補い手を取り合って進んでほしい。日中の狭間に生まれ育って暮らしてきた著者の願いだったのでしょう。