爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「東京消滅 介護破綻と地方移住」増田寛也編著

著者の増田さんといえばこの間の東京都知事選に自公推薦で立候補したものの、小池さんに大差で負けてしまった人です。

しかし、本書を読めばやはりこの人が都知事にはふさわしかったのではないかと思わせるものがあります。

 

日本創生会議という、民間のものでありながら日本の今後を長期的視野を見据えて低減するという、産業界、学識経験者の連携した活動があったそうですが、そこで首都圏問題検討分科会の座長として、増田さんが取りまとめたのが本書内容となっています。

 

扱っているのは、東京など1都3県でのこの後の老齢者の急増とそれに対する介護施設の圧倒的な不足、対策として首都圏側が多くの費用を負担する形での地方介護施設への老齢者の移住という問題です。

 

段階の世代が75歳以上となる、2025年には首都圏で後期高齢者が現在より175万人増加するそうです。そのうちの一定割合の人々は介護が必要となり介護施設への入所を求めるでしょうが、現在でも首都圏には十分な数の施設はなく、入所待ちといった状況も見られるところです。

それが、何十万人も一気に増加する(あとわずか10年の間にです)ならば、よほどスピードを上げて対策をしていかなければならないにも関わらず、真剣に考えている様子はありません。

1都3県で、要介護者の増加数は2025年までに61万人という予測もされています。どうするつもりでしょうか。

 

そこでこの会議が着目したのが、今は高齢化先進地域である地方で医療・介護の設備に余裕のある地域を探すことです。(あるいは、これから先余裕ができてくる地域)

大都市圏、地方都市、過疎地域と分けて考えていくと、さすがに現在でも過疎地域となっているところでは、そのような施設も不十分であり受け入れのための人口も少なくその余裕はないようですが、地方都市ではこれまでの経緯から医療施設も十分にあり、最近の高齢者急増に伴って介護施設も数多くできているところもあり、10年後に要介護者受け入れの余地があると考えられる地域もありました。

 

なお、私の現住所の熊本県でも、熊本市域と八代市は医療介護設備に余裕があり受け入れ可能地域として評価されています。光栄な事です?。

 

この結果は数年前に公表されましたが、当然ながら地方都市側からは「東京は若者だけを吸い取って老人を回してくるつもりか」という反発が大きかったようです。

これには、もしも高齢者が介護不要の状態で地方に移住し、そこで要介護の状態になった場合はすべて地方側に財政負担が掛かるという、現行の制度の問題点があるからでもあります。

都会で要介護になっている人がそのまま地方の介護施設に入所するとしたら都会側の自治体から費用を地方に移転する制度があるそうなのですが、現行制度の限界でしょう。

 

要はあくまでも費用負担の制度上の問題のようです。

移住を勧める都会の側がその後の費用負担も責任を負うように決めればスムーズに進みそうです。

 

このような大混乱を招きかねない状態に、あと10年も経たずになり兼ねないということを、増田さんを破って都知事になった小池さんは十分に認識しているのでしょうか。