爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「先端巨大科学で探る地球」金田義行、佐藤哲也、巽好幸、鳥海光弘著

地球の内部に関する学問、地球科学は地震や火山の災害に大きく関わることから研究も注目されますが、実際はまだ地底の実物に触れたということはありません。

時々起こる火山の噴出物や地震の振動の伝わり方を見て解析を進めてきました。

 

しかし、現在では様々な巨大科学と呼ばれる手法の発達で、地球内部の様子も解析できる可能性が出てきました。

本書はそういった進歩の現在と将来について、それぞれの分野の専門家4人が分かりやすく(多少難しいかも)解説をされているものです。

 

地球深部探査船「ちきゅう」を活用した深海掘削科学について、海洋研究開発機構の巽さんが解説しています。

陸上で掘削をしてマントルまでたどり着くには30km以上掘らなければならず、ほとんど不可能です。しかし、深海での海洋地殻の厚さは6km程度であり、最新技術によればマントルに到達することが可能ということです。

また、海溝というところはプレートの沈み込むところであり、地震の巣でもある、またそこに積もった堆積物は2億年程度の連続性がある等の研究が期待されるそうです。

 

海底掘削研究の歴史は1957年からアメリカでモホール計画というものがスタートしましたが、おりから宇宙開発のアポロ計画が進展している時期であり研究費獲得競争に負けてストップしました。

その後、「グローまーチャレンジャー号」という探査船を使った国際共同研究プロジェクトのIPODが1975年より開始され、海洋地殻の年代が海嶺から遠ざかるほど古くなるということを見出し、プレートテクトニクスを実証したという成果を挙げました。

そして、2001年からは日本が主導する統合国際深海掘削計画をスタートさせ、海底下7000mまで掘削可能な掘削船「ちきゅう」を建造することになり、2005年に完成しました。

2007年からは南海トラフ震源域の掘削を始めています。

 

その他の3章は研究も具体的なものではないので題名と著者名だけの紹介にしておきます。

地球テレスコープ計画 海洋研究開発機構 金田義行 (地底地震学)

連結階層シミュレーション 海洋研究開発機構 佐藤哲也(シミュレーション科学)

地球科学の展開と予測科学 東京大学 鳥海光弘 (レオロジー・岩石学)

 

このような研究の成果というとやはり地震についての知見の修得ということになるでしょうか。

断層の位置や構造、プレートの動きもかなり判ってきていても、地震がどう起きるのかなかなか分からないそうです。他にも色々な要因が重なっておりまだ多くの研究が必要なんでしょう。

それだけ多くの才能を持つ人々が従事できれば良いのですが。