爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「四季の地球科学 日本列島の時空を歩く」尾池和夫著

日本列島は4つのプレートが押し合うという地球の中でも特異な状態にあり、地震や火山の活動も非常に盛んなところですが、山河が美しく四季の移り変わりもあり自然の恵みも多いところです。

そういった日本について、もともと地球物理を専門としながらも京都大学で総長も務め、その後日本ジオパーク委員会の委員長ともなった尾池さんが様々な方向から解説をしています。

なお、尾池さんは奥様の影響で俳句の会にも参加されているとか。

四季を読み込むことに非常に敏感である俳句というものも背景に置いてのものとなっています。

 

一応、本書の構成としては春から夏、秋、冬と並べていますが、それほど四季に偏った内容とはしておらず、地球科学の解説も適度に含まれています。

 

夏とからめて、梅雨の時期の最上川の水流が「五月雨を集めてはやし最上川」というように芭蕉に詠まれていますが、日本の河川が急流であることは実は造山運動とも関わってきます。

プレートの押し合っている末端にある日本列島では山の隆起も速く100万年で1000m高くなります。

しかし、降水量も多いために隆起した分がそのまま雨で削られ短い距離で流れ落ちる急流の川によって流されることになります。

そういった隆起で起きる断層とそこから流れ出し堆積する土砂によってできる肥沃な平地とが同居しており、そこにできる人口密集地には活断層も近くに存在するという巡り合わせになってしまします。

そのために日本の大都市は必ず大地震とも隣り合わせになっているということになります。

日本で起きた直下型地震震源地はだいたい県庁所在地に近いということになりました。

 

日本の地質の多様性も世界で類がないほどのものです。

これは、各方向から押し寄せるプレートが持ってきた付加体がここに溜まって形成されたもので、様々な由来の岩石が狭いところに共存しています。

これが生物の多様性にもつながり、多くの生物がかつては共存していました。

これは、海中の生物でも同様であり、世界の海洋生物の種の数の15%あまりが日本近海に存在するという、生物多様性が極めて高い「ホットスポット」と言えるものだそうです。

 

災害の多いことは仕方ありませんが、それが特異とも言える自然を作り出してきたとも言えるようです。

それにあまりにも無頓着に開発を進めてしまったようです。

せいぜい、ジオパークを見て思いを新たにしたいものです。