フランス文学専攻という日本大学教授の伊藤さんが13世紀の当時の三大勢力がもつれ合った世界大戦について記したものです。
他の方の書評やブログなどもありましたが、モンゴル人を「仏教徒」と著されているという大きな問題点があり、歴史についての正確性を疑問視されるということもあるようです。かなり細かい点まで書かれていて詳しくは分からないのですが、大まかに見ればさほど狂いはないようにも思いますが、専門家から見ればどうなのでしょう。
13世紀まで聖地エルサレムをめぐり西欧とイスラムの争いは激しく続いており、それにギリシア正教のビザンツもからんでいましたが、モンゴルの来襲を受けその構図が大きく変わってしまいます。
北方ではロシアまで占領し南方では現在のイラク・シリアまで進出したモンゴル勢力もそこで西欧・イスラムの主力の抵抗を受けストップします。しかし、強力な圧力があることは間違いなくそれに対してエジプト、フランス、ローマ教皇などが戦争・外交のあらゆる手段で対抗していきます。
モンゴル勢力もその王族内に婚姻を通じてイスラムやキリスト教徒を取り入れてしまったために勢いを殺がれてしまったようです。
あとがきにもありますが、著者は911のアメリカの同時多発テロに衝撃を受けたということです。イスラムとキリスト教の宗教対立という観点だけを強調することは不適当かもしれないと思いますが、歴史を見てみるとどちらの側からも町を滅ぼし住民皆殺しという記述が数多く、モンゴルの暴虐と伝えられる事例なども決してその民族性だけを論うことはできないようです。