爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「文明崩壊 上」ジャレド・ダイアモンド著

「銃・病原菌・鉄」で有名でピュリッツァー賞も受賞したカリフォルニア大学教授のダイアモンドさんの本です。著者は生物学の研究から始めたそうですが、その後文明論の分野でも数々の著書を発表されています。

世界各地で大規模小規模に関わらず栄えた文明(そこまで行かなくても地域社会)が跡形もないように消え去った例は数多いのですが、この上巻ではイースター島マヤ文明グリーンランド、アナサジ族などが扱われています。

著者はまず自らも長く過ごしてきたアメリカのモンタナ州の農場についての記述から始めます。アメリカの中では自然豊かなようなモンタナですが、実は鉱山の鉱毒や森林破壊、土壌の荒廃などさまざまな問題が出ているそうです。

イースター島の問題は他でもいろいろと聞いたことがありましたが、無人島であったイースター島に最初にポリネシア人がたどり着いた時には森林に覆われた島だったそうです。しかしその木々はどんどんと切り倒され再生する間もなく全滅してしまい、農業生産力も衰退して行き最後にはモアイ像を立てるまでに栄えていた文明も破壊されてしまったということです。
グリーンランドにも温暖な時期にノルウェー人が移住し、多くの農場を開いたそうです。しかし、少しは温暖だったとはいえやはりぎりぎりの温度で農業生産も難しく、また食糧などを頻繁に本国から運ぶには距離が遠すぎて、気候が寒冷化したときに一気に崩壊してしまいました。それがあまりにも突然だったようでその遺跡もまったく傷つかずに残っているようです。
しかし、グリーンランドではイヌイットは生活しておりその方法を取り入れればもう少し長くは住むことができたかもしれませんが、彼らは原住民との接触はほとんどしなかったようです。魚を食べることもなかったとか。ちょっと不思議な気もします。

下巻では現代の文明についての記述もあるようです。期待して読みたいと思います。