爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「2531年佐藤さん問題」

ベルギー在住の「ちびころばーちゃん」ことShohojiさんが書いていたことですが、「2531年佐藤さん問題」というのがあるそうです。

shohoji.hatenablog.com

選択的夫婦別姓を求める団体というのがあって、そこが東北大の吉田教授という方に依頼し、このまま夫婦同姓を守っていくと姓の数がどんどんと減っていき最後には「佐藤」だけになってしまうということを示したんだとか。

まあ理論的には間違いのないところなんでしょう。

 

この「制度」で続ける限り、姓というものはどんどんと減り続け、やがて収斂してしまうというのは事実でしょう。

詳細は覚えていませんが、かつて大航海時代にイギリスの船が南太平洋で難破して島に漂着しそこの原住民の女性と結婚してイギリス人社会を構築したということがありました。

最初数十人の船員から始まったため姓というものも多数種だったのですが、数百年経過したら姓の種類が減少して最初の数分の1になってしまったということです。

 

ただし、ここでいう「制度」とは、上記記事で言われているような「夫婦別姓か同姓か」ということではなく、「父親の姓を子供が受け継ぐ」というものです。

同じようですが、その違いは大きいものです。

 

夫婦別姓制度の導入を目指す人々は多いのですが、その主眼はあくまでも男女不平等という問題であり、子供の姓をどうするかということをきちんと考えることがあまり見られないように感じます。

それはこれまで通り原則として「父親の姓」なのでしょうか。

それとも「母親の姓」、あるいは複数の子供があった場合半々にする?

これを父母どちらかの姓に統一する場合は、「姓の種類の保存」にはまったく役立ちません。

夫婦別姓制にして母親は元の姓を保持したとしても子供の代になれば現在と一緒になります。

 

日本は姓の種類が非常に多いと言われています。

それが増加したのは平安時代から鎌倉時代、武士が勃興していた時期に「名」といわれる所有地の名称を自らの氏として名乗る風習が一つの契機でした。

源氏の子孫が地方に移住しその地の名を取り足利、新田、武田等々を名乗るようになったというのがその例でしょう。

そこから来た「名字」という言葉が氏姓を示す意味になったというのも一つのポイントです。

それは公家にもおよび藤原氏の子孫が屋敷の所在地を名乗るようにもなり、近衛、九条等の氏が増えていきました。

もう一つの増加期が明治維新です。

すべての人が姓を名乗ることとなりますが、実際には名字を名乗っていなかった多くの人も江戸時代を通してかつての氏姓を保持していたのですが、それを忘れた人々などは姓を作って届けることもありました。

このように現在の日本の姓の種類が多いという現象の原因は「新たに作った」からです。

 

もしも姓のバラエティーが多いことが良いのであれば、「新たな姓を作る」ことにすればよいだけのことです。

結婚を機に新姓を届けるでも良し、別に特別な機会でもなく自由に改姓しても良しということにすればどんどんと姓の種類は増加するでしょう。

まあ無茶苦茶な状態になると思いますが。

 

このように、一見科学的なような理屈をこねくり回して、世間を驚かせようという目的だけは達したようですが、氏姓制度の本質を知らなかったために変なことになってしまったようです。

 

なお、とは言っても私は「夫婦別姓選択可能」について決して否定する意図はありません。

かえって他人の都合も考えずにすべて同じでないと困るなどという保守主義者の態度を嫌悪しています。

しかし話題作りがしたいのかもしれませんが、あまりにもおかしな理屈をこねくり回すのはどうでしょうか。

 

根本の問題としては、現状の制度である二名制すなわち「家の名前」+「個人の名前」で個人名を表すというもので良いのかどうかということでしょう。

さらに学校でも会社や地域でも人を呼び表すのに「家の名前」を使うことが多いということで混迷を深めています。

そのために結婚して姓を変えたら自分がなくなったように感じるということになっています。

いつまでも「家の名前」を使っててよいのか。

勝手に作った「名乗り」でも構わないのではないか。

たとえば「百万馬力」+「アトム」とか、「流れ星」+「お竜」とか。

二名制では足りなければ、「湘南」+「サザン」+「無宿者」+「佳祐」とか。

どんどんとその時の気分によって名乗りを変えていくというのも面白いかもしれません。

社会の混乱はさらにひどくなるでしょうが。