爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「2034 米中戦争」エリオット・アッカーマン、ジェイムズ・スタヴリディス著

普段はほとんど小説は読まないのですが、珍しく読みました。

さすがに中味を何も書かないわけにも行きませんので、いわゆる「ネタばれ注意」です。

 

アメリカと中国の緊張は現実にも高まっており、戦争の危機も語られるほどです。

この本は2021年の時点での状況をもとに2034年に米中戦争開戦の時期を設定してその時の軍人や政治家、そしてその家族などのエピソードを並列させて進めるという手法で描かれています。

なお、著者のアッカーマン氏は戦争関係のフィクション、ノンフィクションを書いていますが、もう一人のスタヴリディス氏は元米海軍の提督ということでその知識をフルに使ったということでしょうか。

 

発端は南シナ海と中東、中国がその圧倒的なIT技術を使い米艦隊を壊滅させさらに最新の戦闘機をIT的に乗っとるというところから始まります。

艦隊の通信を完全に遮断するだけでなく、現在の兵器のほとんどは電子制御されているためそれをハッキングすることで米軍の抵抗力を完全に奪います。

さらにパイロットの意志を無視しその搭乗機を意のままに操り敵国基地に着陸させるということも行ないます。

 

それに対し米軍は二個の空母打撃群を南シナ海に出動させますが、それも瞬く間に撃滅されるという大打撃を受けます。さらに台湾も攻撃を受け占領。

その報復として中国南部の湛江市を戦術核で攻撃。

中国はその報復としてアメリカのサンディエゴとガルヴェストンの二都市を核攻撃。

そしてアメリカはさらにその報復として中国の三都市を核攻撃しようとします。

しかしそこでインドが中国軍、米軍の双方を攻撃、しかもサイバー技術も見せつけるということを行ない、ギリギリのところで米中双方を停戦させ、終戦に向かわせるということです。

 

さすがに現実の国際情勢を取り込みリアリティも強く感じさせるものとなっています。

このようなことを絶対に現実のものとしてはいけないという教訓を多くの人が持つのでしょうが、そうでない人もかなりの数いるのかもしれません。

なお、本書刊行の時点ではまだロシアのウクライナ侵攻は起きていないため、ロシアは傍観者で裏面工作者となっていますが、そこが現実社会とは少し違った所でしょう。