爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「字が汚い!」新保信長著

著者の新保さんは編集者兼ライターということですが、子供の頃から「字が汚い」と言われ自分でも自覚し悩み続けていたそうです。

ただし、周りに多く居る作家などを見回しても、自分以上に字が汚い人はたくさんいるようです。

 

最近はワープロなどが普及し手書きの文字を書く機会も減り字が汚いことによるマイナスも減っているかと思いきや、結構大切な場面で字がきれいだと有利ということが多いようです。

そこで著者も何とか字がきれいとなるような方策を探すのですが。

 

本書冒頭に、「字が汚くて絶望した」事例から書かれていますが、某大物漫画家に依頼の手紙を書く際に「やはり手書きでないと真心が伝わらない」ということで書いてみたのですが、あまりの字の汚さに「自ら絶望した」ということです。

結局、パソコンで書いた文書をプリントアウトして送ったのですが、交渉はうまくいかなかったそうです。

 

著者も字が汚いと言われたのは子どもの頃からで、そして親に言われて書道教室に通ってみたというのも多くの人が経験していることのようです。

それでもまったく効果はなく、そのまま大学にも進み「東大生のノートはかならず美しい」なんていう本もあるのに、(なお、著者は東大文学部卒です)、自分のノートは全く美しくないのにがっかりしています。

 

作家の連中にもかなり字の汚い人は多いということで、その中でもひどさでは抜群の石原壮一郎氏に話を聞きに行きます。

その経歴も自分とほぼ同様。

子どもの頃から汚いと言われ続け、やはり親に無理やり書道教室に通わされるもまったく効果なく、そのうちにワープロが出てきたのでそれを使うようになったとか。

 

これじゃダメだと自覚し、何とか字が上手くなる手はないかとあれこれ試してみます。

「30日できれいな字が」とか「100字練習するだけで」だとか、いろいろな本が販売されています。

しかしどれも似たり寄ったりでやってみても大して上手くなることもありません。

ペン字教室というのも結構生徒が多く流行っているようですので試しに通ってみます。

そこで教えている先生にインタビューしたり、生徒に通う理由を尋ねたりと、しっかりと取材もしていますが、結局は自分の字の方は大して上達しなかったようです。

なお、生徒の多くは女性でやはり事務職や秘書などへの就職を考える人が多いようで、そういった職では字が上手いということは必須なのでしょう。

 

なお、字の練習以前の話として、やはり筆記具は良いものを使った方がよく、手にしっくりくるというのはもちろん、インクの成分というものも大きく関わっており、顔料を使ったゲルインクペンというのが良いそうです。

また、大切な書き物の場合は「補助線をあらかじめ引いておく」というのも有効なようで、字が下手なら下手なりに手間を掛ければ少しは良くなるとか。

 

手書きにこだわる場合としては、就職の際の履歴書というものにどうしても付きまといます。

企業側が手書きを指定する場合も多く、それを選考の基準にもするということなのですが、やはりその書き方でその人のやる気や人柄まで分かると言われるときれいに書きたいということにもなるのでしょう。

 

偉い政治家なら字も上手いかというと、昔の政治家にはかなりの書家もいたようですが、今はひどいものだそうです。

中央省庁の看板は基本的には発足時の担当大臣が書くという慣例になっているそうですが、内閣人事局の看板を書いたのは2014年に稲田朋美氏で、まあかなりユニークなものになっています。

2001年の省庁再編の時に「内閣府」の字を書いたのは当時の首相の森喜朗氏、字は堂々として立派ですが政権の方はすぐに倒れました。

2015年に発足した「スポーツ庁」の看板は当時の文科省大臣の下村博文氏、あまり品のある字とは言えないようです。

なお、ヨーロッパでは偉い政治家ほど字はひどいようで、ドイツの元首相メルケルのサインは何が何やらまったく分からないようです。

 

まあ今さら上手い字など書けるはずもないのですが、せめて「大人っぽく良い感じの字が書けるようになりたい」ということです。

 

私も新保さんと同様で子どもの頃から字が汚いと言われ続け、小学校の頃に書道教室に通わされたが駄目だったというのもまったく一緒です。

そのまま会社でも苦労し続け、報告書なども汚くて読めないと言われ、ワープロが普及してきて大喜びしたものでした。

その理由ははっきりしています。

「思考に字を書くのが追い付かないから」

メモなどは後から見ても自分でも読めません。

ゆっくり落ち着いて書けばまだ少しは良いのですが。

もう今さら変えようもありません。