最近狙撃され絶命、それからも色々ととりあげられることの多い安倍さんです。
それまでの自民党の総理と違い確かに非常に意志のはっきりした政策を打ち出してきたように見えます。
そのような安倍政治について、共同通信の論説委員の著者が2015年、安倍政治絶頂時に書き記したものです。
まだ一見して安倍政治が経済などで良い結果を出しつつあったように見えた当時ですので、それを様々な方向からできるだけ公平な立場で評するというのは難しかったのかもしれません。
安倍政治はその後の様々なスキャンダルの表面化などで大きくイメージを損なうことにもなるのですが、この本の当時にはそういったことはまだ表面化せず、あくまでも政策の正否を問うということで語ることは可能だったのかもしれません。
それでもアベノミクスにつながる数々の政策は、その後は簡単に化けの皮がはがれるようなものだったのですが、その当時は何かやろうとしているだけでも認めてやろうと言った姿勢で書かれているためか、今となっては大甘の評価には少し引くところがあります。
その一方、安倍の中韓などに対する歴史評価などについては辛口の評を次々と指摘していることから、著者の興味の対象はそのあたりだったということが分かります。
安倍の罪の一番重いところはこの本で大甘の評価がされている部分だと思いますが、まあその辺は仕方のないことかもしれません。
安倍の心中では、国家というものの重さがとてつもないものであったようです。
色々なところでの意思表明からそれが透けて見えます。
そしてそれが一番損なわれたのがアメリカに対する敗戦とその後の軍政であると感じているのが安倍であり、「日本を取り返す」などと言う意志表明もそれを目標としているということです。
それは、安倍の祖父の岸伸介の政治、そしてその心中とも関わっていることです。
占領軍時代に決められた数々の事、日本国憲法もそうですし教育基本法もそれに当たりました。
そのような占領軍時代の負債を全部解消することが「日本を取り戻す」ことだったということです。
私は、てっきり「民主党政権時に失われた利権を自分たちの手に」取り戻すことだと思っていました。
これは著者の意見に関わらずかなり自信があります。
占領軍時代のことをすべて否定という中には、東京裁判の否定も含まれます。
特にA級戦犯はあくまでも当時の連合国側の意志に基づいて判断されたものであり、それを覆すことが安倍の宿願ともなっていたということです。
しかしGHQの施策など占領時代のことを否定するということは、現在のアメリカの政策にも反旗を翻すということであり、昔のことだとアメリカも納得などと言うことは絶対に無いはずです。
安倍のやったことはアメリカに対して属国としての立場をより強く表明したことだと思っていますが、その内心とは相当違っていたということでしょうか。
この点はちょっと著者の説明はあまりにも状況と食い違っているように見えます。
安倍政治はそんな立派なものじゃないという方が当たっているのでは。
まああくまでも2015年当時の状況での判断ですので、これをもって著者の姿勢をあれこれ言うのは少し無理かもしれません。
もはや安倍も自分のしたことを悔い改めることもできなくなりました。
それが一番残念なのは安倍本人であるはずですが、おそらく地獄においてもそうは思っていないことでしょう。