亀井勝一郎は戦前から戦後にかけて活躍した文芸評論家です。
戦前には左翼思想家として活動しますが、逮捕投獄されて転向、その後仏教に触れて回心しました。
人生論・恋愛論などの著書も多数出版しかなりの売れ行きだったそうです。
この本もそのうちの一冊でしょうか。
様々なところで発表された文章を集めており、早いものでは昭和10年代から、最後は昭和30年代のものまで含んでいます。
宗教と文学、20世紀日本の可能性、日本の知恵西洋の知恵などとまとめられていますが、最初からそのつもりで書かれたものではないようです。
宗教についてはどうも自分がほとんど考えてこなかったせいか、あまりそれの価値に浸かり切った文章は読みにくいものです。
あまり長い文章を読んで理解するのに疲れやすくなったせいか、巻末の「断想」と称する2・3行からせいぜい数行の警句的な文章はありがたいものでした。
全部をこれにしてしまうと、それも読みにくいでしょうが、これだけで10ページほどの本にしたらやっぱり売るのも売りにくいか。
とにかく、すでに1966年には亡くなられている人の文章です。
その硬い文章の印象だけを見ても時代が変わったということを感じざるを得ません。