爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「掟破り」大下英治著

社会の様々な集団には、法律以前の「掟」と呼ばれる規律が存在し、それを破ったものに対しては厳しい処罰が下されるということがあります。

 

暴力団などのアウトロー集団では法律に頼るわけにはいかないのでなおさら「掟」の持つ意味が大きいのでしょうが、アウトローとまではいかなくてもそれに近い体質の?政治家や芸能界にも同様なものがあるようです。

 

やむにやまれぬ事情により掟を破るということもあったでしょうが、しかし、時代の流れでその集団自体の性質が変わってきたために、確信犯的に破ってしまったということもあったのかもしれません。

 

そういった、「掟」と「掟破り」のドラマを、長年「週刊文春」で記者として活躍、その後は著述業の著者が描いています。

 

やくざの掟の項では、平成の最初の頃に広島で勃発したやくざ戦争を扱っています。

「親分からもらった盃を子分の方から返すことはできない」というのが掟ですが、それを破ってしまったらどうなるか、やはり血を流す争いとなります。

 

かつての首相、岸信介の退陣をめぐり、当時の自民党では派閥の領袖が様々な駆け引きと金やポストを使っての裏取引で次の総裁を争いました。

日米安保条約の改定に政治生命を賭けた岸は、それを成し遂げるために大派閥を率いる大野伴睦河野一郎の力を借りるため、条約改定後の総裁選には出ずに大野を押すということで密約を結びます。

しかし、首尾よく条約は改定したものの、岸は他にも「次期総理」という空手形を乱発しており、結局は大野の総裁就任はならず、池田勇人にそのポストは行ってしまいました。

政界の掟は「密約は破られるものである」だそうです。

 

小池百合子東京都知事立候補の際のドタバタ劇も取り上げられています。

自民党都連の掟は「自民党東京都連とその会長の決定は絶対である」ということだったそうですが、それに真っ向から刃向かい小池は都知事の座を射止めたばかりか、都議選でも自民党を大敗に追い込みました。

その後の挫折も印象深いものでした。

 

人が作る集団というものは、どのようなものであっても規律というものが重要なのでしょう。

しかし、それが変わらざるを得ない時代の流れというものもあるようです。

 

掟破り

掟破り