爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「航空・貨物の謎と不思議」谷川一巳著

貨物専用機という飛行機が飛んでいて、いろいろな貨物を運んでいるということは聞いたことがあり、またフェデックスといった航空貨物専用の会社もあるということは知っていますが、その実態はどのようなものか、改めてこの本で知ることができました。

 

実は、日本国内では貨物専用機を運行しているわけではなく、現在では旅客便に載せる形での営業になっているそうです。

海外と結ぶ国際便では国内、海外の各社が多くの貨物専用機を運行しているそうですが、それらの貨物便は主要空港への運行のみで、現在では成田、羽田、中部、小松、関西、北九州、那覇に限られているそうです。

 

ただし、国内便は航空貨物の需要が無いかというとそうではなく、現在運行している旅客便にも多くの貨物スペースがあり、そこに載せる形での貨物便は増加しているそうです。

なるほど、飛行機に乗ったときでも見ていると多くのコンテナを収容していますが、旅客の手荷物だけにしては多いからおかしいと思ってました。

 

旅客機に貨物を収納して運ぶというのは、とくにボーイング747(ジャンボ)が就航して以来増加しているそうです。

747はワイドボディと呼ばれ、旅客スペースが非常に広くなったと共に、客室の下部のスペースも広くなったために、そこを貨物スペースとして利用することが進められました。

貨物をコンテナやパレットに収納して積み下ろしするという方法もそこから進歩しました。

あの、機体のカーブに合わせて下が切り取られたような独特の形のコンテナはそこから始まりました。

 

その後、少し小型の機体になってもあのコンテナが積めるような形の貨物室を確保するような形での機体の開発が行われたそうです。

 

 

アメリカなどでは、トラックを使う宅配便というのも距離が長すぎて難しいために飛行機の利用が進められていますが、日本では国内便と国際便での貨物輸送の性格が異なります。

日本の国内貨物は長距離の宅配便やコンビニ商品など、小口の細々したものをコンテナにまとめる形のものが多いのですが、国際便では多くの工業製品を運びます。

それでも、大型機械などは少なく、自動車部品や電子機器、化学薬品などの比較的小さくて高価なものに絞られるそうです。

逆に、航空貨物輸送の路線が確保されているということが、部品製造企業の立地を決めているとも言えます。

 

ボーイング747、ジャンボ機は最大500人の客数を運ぶという、大量輸送時代をもたらした機体ですが、さすがに燃料効率が悪くコスト高になるということで、旅客輸送からは引退が相次ぎ、もはや現役では使われていません。

しかし、そういった引退した機体も含めて貨物専用機とする傾向は続いており、多くのジャンボが貨物輸送に使われています。

ただし、さすがに最近は貨物用としても燃費の良い双発機が開発されており、徐々にジャンボの出番は少なくなってきそうです。

 

日本には現在は貨物専用機の国内運行は無いと言いましたが、一時それが存在したこともありました。

日本航空系列で、ヤマト運輸日本通運とも共同出資して設立したのが、1991年の日本ユニバーサル航空でした。

羽田新千歳や名古屋新千歳間の運用をしましたが、バブル崩壊のせいもあり、1年で撤退となってしまいました。

もう一つは、佐川急便系列で2008年に就航したギャラクシーエアラインズでしたが、羽田新千歳や北九州関空間の路線を運行したものの、2年で撤退しました。

日本では、高速道が整備されトラック輸送が発達している上に、鉄道のJR貨物のコンテナ輸送やフェリーも多数運行しており、航空貨物にはあまり需要がないようです。

 

貨物専用機は、大型機が多くその飛行もダイナミックなものですので、ファンも多いようです。

成田空港周辺などでは、貨物機を狙って撮影をするファンも居るとか。

このあたり、鉄道で貨物列車を狙って撮影するファンの心理と通じるものがあるそうです。

 

航空・貨物の謎と不思議

航空・貨物の謎と不思議