女性の労働は、かつては非常に差別的な制度の中で低賃金で補助的な仕事に限定され、結婚退職が普通のこととされていたのですが、制度としては急速に改善されてきているようです。
それが、実際に公平に運営されているかどうかは問題が残るところでしょうが。
この本は、出版は2000年10月、書かれている内容の多くは1990年代後半のものです。
したがって、まだ制度の改良も十分には進んでおらず、女性を差別的に扱う社内制度も多く残っていた頃であり、本書記述もそういったものを取り上げています。
著者の熊沢さんは、労使関係や社会政策を専門とする、当時は甲南大学経済学部教授であり、具体的事例の調査、雇用制度の問題点等、非常に精密な議論を展開されていますが、それから18年が経過し、制度的にもかなり変化しており、本書内容も旧聞と言わざるを得ないのが残念です。
例としてあげられているものが「男性は全体で正社員比率が81%、低賃金比率が25%なのに対し、女性は正社員比率54%、低賃金比率74%である」と言うものです。
ただし、その後の展開はどうでしょう。
理想的には女性の雇用制度を男性に近づけることだったのでしょうが、実際にはどちらもまとめて非正規雇用化されてしまったようで、男女の不公平どころの話ではなくなってしまいました。
本書の時代には、私もまだ現役バリバリの会社員でしたが、このような雇用制度の矛盾も自らの問題でした。
その後、定年間近になって早期退職で放り出されるところまで、雇用問題の真っ只中の実例となってしまいました。
現在では「男女不平等」どころではないとは言えないでしょうが、それより大きな問題ができてしまったように感じます。