著者は中国生まれの中国人、IT関係の開発者として日本でも勤務、20年に渡って中国と日本を行き来しているそうです。
その王さんがあくまでも中国人に向けて日本と日本人を解説している本ですが、これを訳者の小林さゆりさんが中国の本屋で見つけ、是非にと頼み込んで日本語訳したものです。
内容は多岐にわたっており、企業で見られる日本人の姿から歴史上の日本人論まで、さまざまな場面での日本人というものを、あくまでも中国人としての意識から論じています。
著者は種々の日本人著作を読破しているようで、文化的、民俗的視点から日本人論を展開していますが、実際に関わってきた多くの日本人を観察したものは深いものを感じますが、書籍から得られたものはやや表層的なものと感じます。
しかし、まあ一般の日本人が自ら考えている日本人論よりははるかに優れた観点であろうとは言えます。
なお、日中戦争以降の問題点についてはさすがに詳しく捉えられているようです。
この辺は中国政府の公式的な姿勢とも異なる理性的な観点と見ることができます。
こういった見方ができる中国人も居るということは心強いものです。
内容は広範囲で詳細なものなので取り上げませんが、面白い点をひとつだけ。
「中華思想」というものは日本の中国論の中で常に語られるものですが、中国人の著者は中国では一度も聞いたことがなかったそうです。
また、中国の大辞典「辞海」にも載っていません。
どうやらこの言葉は日本で広く使われているだけのようです。
これは日本人の中華文化圏内での周辺部であるという自意識から生み出されたものであろうということです。
さらに、日本では中国に中華思想がある上に、朝鮮半島には「小中華思想」があるとしています。
朝鮮では中国の影響が強かったために伝統文化面では日本に対して多少の優越感を抱いていますが、それへの対抗意識としてそのような見方を取ってきたのだろうということです。
この点は面白い観点と感じました。