三橋さんの本は以前にも読んだことがありますが、いろいろと深く調べられており豊富な情報源とスタッフをそろえているのではないかと言う感想を持ちました。
本書でもその印象は感じられます。もちろん題名が表すように広い読者層を想定しているようで悪く言えば「俗受け狙い」というものが強く感じられますが、その基となる資料は確かなものと思います。
ただし、2008年の本書出版以降、中国経済は「本当にヤバく」なっていないんじゃないのという批判はできますが、この7年間で「さらに本当にヤバイ状況に近づいている」と言う見方もできます。
出版当時よりも現在の方が中国経済はより危険な状態になっているというのは上海株急落という先日の危機を中国政府が必死に抑えたということを見ても間違いないのかもしれません。
そうなると本書の内容も決して古くなっておらず今後を予言しているとも言えます。
中国経済の危機といってもそれはアメリカの経済との深いつながりによるものです。
本書はちょうどサブプライムローン破綻によるアメリカ経済危機の後を受けての状況ですので、それによって打撃を受けた中国経済と言う面が強く出た当時のものですが、その後のアメリカ経済というものもそれを脱したというよりは取り繕っているだけのように見えますので、本質的には何も変わっていないということでしょうか。
書かれているように、その時点から超円高と言える状況がやってきて日本の経済界は打撃を受けました。しかし、その後の円安転換で変わったかのように見えますがそこはどうなのでしょうか。
中国経済の経済成長はゆがんでいる指摘されています。人民元を政策的に安くとどめる中国当局の方針で輸出を増やしていますが、それで大きく「外需依存」となってしまいました。設備投資も増え供給過剰となってしまいました。その結果、工業製品の値段は低落する一方、農産物などは高騰するスタグフレーションに進んでいると見られます。
その後の状況を見れば確かに一部の富裕層を除いて庶民の生活は悪化しているようです。それがウイグル族やチベット族の反乱と言うものにもつながっているのでしょう。
しかし、著者の指摘するように中国では主権者は人民ではないのでいくら反乱者を鎮圧しても人民解放軍は痛痒を感じず、主権者たる共産党のために働くので、反乱は力で押さえつけるという行為は今後とも続くようです。
中国社会の不安定化という状況は続くということでしょう。
日本の対処として、中国を「投資先」として見るのも「輸出先」として見るのも危険極まりないことのようです。中国に依存しない方策が最良ということのようです。