爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「オタクの息子に悩んでます」岡田斗司夫著

岡田斗司夫さんといえば、レコーディングダイエットで痩せた人という方が有名かもしれませんが、評論家で大学教授も勤められ、さらに朝日新聞の人生相談欄で相談員もされているそうです。
この本はその人生相談の方法について記されています。まあ新聞の人生相談をやってみるという人はほとんど居ないでしょうが、ちょっと知り合いから相談を持ちかけられたということは良くあることなので、その参考にはなるかもしれません。

朝日新聞より相談員としての打診があった際、どのように進めるかということを考えたそうですが、同欄の相談員の先輩には文章を書くのはすばらしく上手な作家の先生や、上から目線でビシビシと書く大学教授の女性もいて、そのような人達と差別化を図りたいという意図もあり、相談の徹底分析と深層心理の解析、依頼者の立場に立った解答を心がけることとしたそうです。

人生相談に投稿してくる人はさまざまな問題点を抱えており、それをあれこれと書き連ねてくるために何を聞きたいのかよく分からない場合もあるそうです。そこで、昔の出来事や今となってはしょうがないことなどはどんどんとそぎ落とし、本当に聞きたいことだけを残すと1行だけになることが多いようです。
長年つれそった夫から、「誕生日のプレゼントとして禁煙する」と言われたけれど、その後またタバコを吸い始めたから離婚まで考えるという質問者については、さまざまなエピソードの中から本当は夫の死をひどく怖れているという質問者の心理を探し出し、「誰でも死ぬのだから、少しでも楽しい思い出を作っておけ」と解答しています。まさに適切なものでしょう。

継母に苛められ家庭の幸せを知らず、水商売を始めて客の子供を産んだものの父親には逃げられ、今の愛人とも上手く行かず住んでいるマンションのローンも滞りもうすぐ追い出されると言うすさまじい相談もありました。
これも分析していくと継母や子供の件はもはやどうしようもなく、問題は住む場所がなくなるということだけのようでした。したがって、早くその対策を立てることというだけがやるべきことで、後はどうでも良いということになりました。

なにか問題を抱えた時に、思考ツールを使って分析すればよいと言う方法を提案しています。分析し、仕分けし、等々ですが、非常に論理的な方法です。まあそういったことができるなら苦しい事態に陥ることもないでしょう。

思考ツールには「メーター」というものもあります。世の中には二分割で悩む人が多く居ます。行動力が無いのを悩むという女子大生には、今の行動力を10としてどれくらいになりたいのかと聞いています。実は誰でも行動力0ということはないはずです。自分の行動力が10であるのに、他の人は20とか30ですということならまだ解決できることで、1でも2でも上げていこうという話なのですが、「自分はまったく行動力がない」「他の人は行動力がある」という考え方で悩むようです。この思考方法は応用が利きそうです。

人生相談では解決法を見つけてやるということができない場合も多いようです。それでも解答するのはそれで少しでも本人が楽になるということもあり、また相談を受ける側が楽になるということも有得るということです。また、それを読んだ読者が影響を受けるということもあり、必ずしも効果的な解決法が無くても良い場合も多いとか。

中には相談者に怒りをぶつけてしまうこともあるそうです。年取った母親が要らないものをたくさん買い込み困るという中年女性の相談には、母親の思いが分からないかと怒っていました。これもよく読んでみれば納得のできる話ですが、そのような事態に遭遇してしまえば悩む人も多いかもしれません。

最近は人生相談というコーナーのない新聞もあり、あまり目にしなくなったような気もしていましたが、面白いものかもしれません。