爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「古代日本のルーツ 長江文明の謎」安田喜憲著

著者は環境考古学専攻ということですが、縄文文明ということを提唱したり、長江文明の発掘にも関わったりと、なかなか広い活躍をされてきた方のようです。

私が長江文明ということを知ったのはせいぜい15年ほど前で、それまでは古代文明はエジプト、メソポタミア、インダスと中国の黄河文明であり、中国南部には楚や蜀など遅れて中国文明に参入してきた辺境の民族は居たという程度の認識だったのですが、長江流域には黄河と同時代かさらに古い文明といえるものがあったということは衝撃でした。
著者はその遺跡の発掘にも関わっていたそうです。

環境考古学という観点から解析していくと今から5700年前に地球全体の気候が寒冷化したそうです。その結果、北緯35度を境にして北では湿潤化し南では乾燥化しました。そのためにメソポタミアなどの畑作地帯では農業の発達が起こり文明が発達したのですが、中国の長江ではすでに存在していた稲作文明に対し北方から畑作の人々が南下してきたようです。つまり、長江文明は5700年前より以前に文明化していたということです。

従来の四大文明の見方からすると文明とは都市を作り、宗教を持ち、さらに金属器を使うことという原則があるために、長江文明では金属器が見つかっていないので文明というには値しないと考えられていたようです。しかし、それに勝るような玉器や土器が見つかっており、これは文明と考えるべきだろうというのが著者の意見です。

しかし、このような長江文明は気候変化により北方では暮らせなくなった人々が南下してくることで滅びてしまったようです。それを作った人々は逃れて南方や東方に向かった人もいたようで、日本まで逃げてきたのかもしれません。
日本の習俗は中国南方から東南アジアにかけての少数民族のものと似たものが多いようです。そこらあたりに共通の源があるのかもしれません。