爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「”健康によい”とはどういうことか ナラエビ医学講座」斎藤清二著

著者は現在は富山大学健康管理センター教授ということですが、本書の課題の一つである「ナラティブ・ベイスド・メディスン」を日本で普及するという活動を行っているそうで、関連する書籍も出版していますが、本書はその中でもごく一般向きに解説をされているものです。

書名のナラエビとは、そのナラティブともう一つはエビデンス・ベイスド・メディスンのエビを取ったもので、もとよりそのような言葉が一般的に通用しているわけではなく著者がその2つの概念を効果的に説明できるように作った言葉ですが、まあ日本語としてもよくあるような響きに聞こえます。

エビデンス・ベイスド・メディスン(EBM)は最近読んだ疫学関係の本でも出てきた臨床疫学的な根拠に基づいた医療ということですが、ナラティブの方はあまり聞いたことがありませんでした。
ナラティブとは日本語訳としては「語り」「物語」と訳される言葉で、患者から見た病気の印象を語るということから始まるということでしょうか。平易に解説されているのですが、どうも上手く理解できません。
NBMとEBMは主観的と客観的といった一般的な理解からすると相反するようなイメージですが、これを両立させていかなければいけないというのが著者の意見のようです。
これは簡単なことではないようですが、EBMだけで押し通そうとすると患者の立場というものを考慮しないものになりがちなんでしょう。

とはいえ、EBMに関するこれまで読んだ本の中で書かれていたようにEBMすら現在の日本では浸透しているとは言いがたい状況で、それにさらにNBMといっても絵に描いた餅のような気もします。