爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「うわさとデマ 口コミの科学」ニコラス・ディフォンツォ著

著者はアメリカのロチェスター工科大学心理学教授です。

最初に翻訳者の江口泰子さんの前書きがあり、2011年の東日本大震災とその後の福島原発に関して噂の蔓延についての記述があります。その時は「何を信じたらいいか分からない」という状況の中で「まったく誤った噂、デマ」が飛び交いました。それらもおそらく詳しく調査研究されているでしょうが、それは別の書ということで、本書では噂について社会心理学的側面からアプローチをしたものということです。

噂には3種あり、「願望の噂」「恐怖の噂」「くさびを打ち込む噂」だそうです。後ろの2者にはデマも多くそれで社会的に大打撃を受ける場合もあり、大きな事件に至る場合もあるようです。
また、噂が生まれるのは曖昧な状況があるところであり、それに何らかのかかわりのある人同士の話の中で伝わっていきます。人が世界を理解していく上での助けになりますが、間違いを起こすもとにもなり、また悪意をもって流されたものでも変わりなく伝わっていきます。
噂を通じて絆が強まるということもあり、また噂を使って自己の自尊心を高めるために使われることもあります。

また、噂というものは「完全に正確」か「完全に不正確」かのどちらかに分かれており、中途半端に幾分かは正確といったものは少ないようです。伝わっていく間に細部が失われ、変形し、ステレオタイプに一致しないものはゆがめられるということもあるようです。
だいたい、何らかの集団の利益になるような噂というものは疑わしく、恣意的に流された場合も多いようです。

有害な噂・デマから身を守り、企業や共同体を守るというのはかなり難しいこともあるようで、それが失敗して選挙で敗れたり会社がつぶれたりということはよく起こることのようですが、対処法としては常時から透明性を高めておくこと、またそのような噂の生じる徴候を早く掴み速やかに説明すること、「ノーコメント」は逆効果になるので避けることなど、まあ常識的なものですがこれに反するようなことをしている場合が非常に多いようだということはよく分かります。そのような個人、企業が噂の一番の美味しい対象なんでしょう。