著者のサマーズさんは心理学教授、偏見やステレオタイプといったものに対しての研究がご専門のようです。
本書はそういったステレオタイプがどのような心理的状況から生まれてくるかといったことを、まあ「分かりやすく」解説されています。
本当に分かりやすいかどうかは少し疑問がありますが。
この世の誰もが「偏見」というものを持っています。
持っていないという人は勘違いしているだけのようです。
テレビのクイズ番組の司会者というのは、決まった台本を読んでいるだけということは少し考えれば分かることですが、それでも毎回その番組を見ているとどうしても司会者自身が多くの知識を身に付けており、賢いかのように感じてしまいます。
アメリカでも冤罪事件は数知れず(日本より多いかもしれません)無実の人が自白したために有罪とされる例が頻発しているそうです。
このような事件の発生にも「見た目」が関係していそうです。
見るからに事件を起こしたようだという偏見が逮捕に結びつき、強制的に自白させるということが起きています。
このような「見た目」優先というのは、誰でも持っている「流されたほうが楽」という心理によります。
目の前で犯罪や事故があっても、その被害者に手を貸すということはなかなかできるものではありません。
これは、特に居合わせた人数が多ければ多いほどその傾向が強まります。
人里離れたところで、1人だけだったらすぐに被害者に手を貸す人でも、都会の真ん中で大勢の人が居れば自分がやらなくても良いという心理状態になってしまいます。
これは「都会の人間は薄情」ということではなく、「都会にいれば誰でも一緒」なのだそうです。
男女をめぐるステレオタイプというのも蔓延しています。
男の子にはブルー、女の子にはピンクから始まり、数多くの男女区別が生じます。
数学の苦手な女、地図の読めない女といったステレオタイプがいくつも存在します。
「つもり」から自由になって判断できる力が必要です。
このように、本書には各所に偏見というものから脱するためのヒント、助言が散りばめられています。
ただし、非常に長いので、それがどこかというのを見つけるのは大変でしょう。
コンパクトに3冊ぐらいに分割してあれば読みやすい本かもしれません。