爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「疑似科学はなぜ科学ではないのか」チャールズ・ウィン、アーサー・ウィギンズ著、シドニー・ハリス画

疑似科学についてアメリカの大学で化学と物理の教授をしている両氏が科学の観点から解説したものです。
したがって、疑似科学の中でも特にアメリカで多いものを対象としています。UFO、心霊現象、占星術、創造説、超能力などが槍玉に上がっています。日本であればこれに血液型性格占いやマイナスイオン、健康・美容関係の商品がどさっと上げられるでしょうがさすがにそれには触れていません。なお、創造説はアメリカならではで日本ではまったく問題にもなりません。

さすがに科学者の執筆であり、科学というものの手法をまず解説しています。観測し、仮説を立て、予測して実験し確かめるという段階を踏んで確立させるということですが、疑似科学の場合はこれのどこかが狂っています。
観測といっても訓練を受けていないものがぱっと見て判断しても間違いだらけになります。UFOを見たと言う「事実」もそれが空の観測に慣れていない人による場合は信頼性が乏しいものです。仮説を立てる段階でも教条主義に陥りやすく、また権威があると感じる人の意見に左右されては正しいものにはなりません。実験をするといっても適切な方法でなければ何の意味も見出せません。

臨死体験というのもアメリカではかなり大きな例数があるようで、それを基に神の存在といった話につなげることもあるようですが、ある程度の科学的分析はできそうです。なにより、生き返った人は臨死ではあっても本当に死んだわけではありません。
創造説はアメリカがプロテスタントにより建国されたということもあり、相当大きな影響を持っていたようで、進化論を教育しないと言う学校も近い過去まで存在していたようです。今でも相当数のアメリカ人が創造説を信じているということで、その影響力もかなりのものでしょう。

訳者の奈良一彦さんの訳者あとがきには日本における疑似科学現状についても少しだけ記述されており、本書のような科学的分析でそちらに迷い込むことを防ぐ必要があるとありますが、まあ無理でしょう。日本もアメリカに負けず劣らず疑似科学大国となっています。