爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「疑似科学はなぜ科学ではないのか」チャールズ・M・ウィン、アーサー・W・ウィギンズ著、シドニー・ハリス画

占星術やUFO、超能力といったものが「科学的」ではないということは認める人が多いでしょうが、それが「なぜ」科学的ではないのかということを説明できるという人は少ないでしょう。

 

著者のお二人はアメリカの化学と物理の大学教授、挿絵を描いているハリスさんもアメリカで科学を扱った漫画を描いているという方で、この本も極めて正統的な科学の観点から疑似科学というものを表しています。

 

事実の探求を進めるために、科学的方法というものを用いるのですが、そこには仮説、観測、実験、予測というものを繰り返し行うということが行われます。

原子の構造を考えるということも、ギリシャの哲学者デモクリトスから始まり、多くの仮説が発表されてきました。

それらの中には実際はまったく間違っていたものも含まれていますが、それが科学的ではないとは言えません。あくまでも科学の中での議論がなされ、そこでより正当な説に代わっただけです。

 

しかし、疑似科学というものにはこういった科学的な手続きが完備されていないのです。

中にはまったく科学的なものに背を向けるものもあります。

 

この本では、疑似科学の中でも欧米において特に広く流布している、UFO、幽霊や亡霊などの霊的存在、占星術、創造説、超能力の5つについて、その主張のどこが疑似科学なのかを解説しています。

 

科学的でない主張の特徴に「反証不能」ということがあります。

科学的であるということは、「反証可能」つまり、その仮説の誤りが証明できる証拠を得られる可能性があること、という条件を充たさなければなりません。

しかし、例えば「人口密集地でエイリアンによる誘拐事件があったのに、その目撃者が出てこないのはなぜか」という疑問に対して「目撃者の記憶はエイリアンによって消されているのだ」という主張は、「反証不能」です。

つまり、その主張自体が科学的ではないということになります。

 

占いというものも、科学ではないのは明らかですが、古代から現在まで各種の占いが行われ、多くの人がそれを心の拠り所としています。

数秘術」というものがあるそうですが、名前に使われているアルファベットを数字に換算し、名前の数を算出してそれをその人の性格や運命と結びつけるというものです。

(例えば、Tは2、Hは8、Oは6といった具合に換算していき、Thomas は22)

この「名数」で運命を見るというのは、日本の姓名判断とほぼ同じというのは知りませんでした。どっちが先かな。

 

創造説というものは、いまだにアメリカでは大きな力を持っているようです。

学校教育での問題も過去のことではないというのは驚きです。

進化論に対しての創造説側からの攻撃というのも「科学的観点」からなされるということですが、それは形だけのものであるのは間違いないようです。

 

疑似科学の横行というのは、日本だけでないことが確認できますが、大して嬉しくもなりません。

 

疑似科学はなぜ科学ではないのか―そのウソを見抜く思考法

疑似科学はなぜ科学ではないのか―そのウソを見抜く思考法

  • 作者: チャールズ・M.ウィン,アーサー・W.ウィギンズ,シドニーハリス,Charles M. Wynn,Arthur W. Wiggins,Sidney Harris,奈良一彦
  • 出版社/メーカー: 海文堂出版
  • 発売日: 2009/02/01
  • メディア: 単行本
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