著者の熊谷さんは大学の卒論で、「たこやき」を取り上げ騒動を巻き起こして以来、そういった食文化についての研究を続け、2003年には「日本コナモン協会」を設立し、初代会長となったそうです。
粉もんといえば大阪というイメージですが、小麦粉だけに限らず様々な穀物を粉にして加工して食べるということは全世界で行われています。日本など米食が多いところで例外的に粒食が行われているだけといえるかも知れません。
しかし、日本では長らく米至上主義という(アメリカ至上ではありません。「コメ」至上です)文化があったためか、粉食は代用食と捉えられることが多く、粉もんもB級扱いといったことになっていますが、最近は相当その地位も上がってきているようです。
全世界的な観点で見ると、日本の粉もんの中でも特にもんじゃ焼などは非常に高い加水率という特徴があります。つまりほとんどさらさらになるほどの薄い溶液を作って焼くというもので、加水率500%にも達しますが、これはかなり異例なもののようです。
長野県北部の「おやき」というのも独特の進化を遂げた粉もんというべきですが、もともと各家庭の料理であったものがどんどんと家庭での調理が行われなくなっているということです。おばあさんなどは作ったものの、それを子供や孫に食べさせるということがなく、断然しつつあるようです。ここで失ったら二度と戻らないと著者は嘆いています。
なお、いくつか参考になったことを挙げると、お好み焼きを店で自分で焼くか、店員に焼いてもらうかという問題がありますが、関東では自分で焼くことが多くても関西では店員が焼くという風に思っていました。また、広島風お好み焼きのように最初に粉だけを薄く延ばして焼いてから具を別に載せるタイプと、キャベツなどは最初から生地に混ぜておくタイプとがありますが、実はこれも店員が焼くかどうかの問題と絡まっているようです。自分焼の場合は難しくないように具を混ぜておくということがあったようです。
なお、関西でも現在は店員焼が多いそうですが、元々は自分焼だったとか。それが、客がそんなに値段取るなら店員が上手く焼けと言い出したので、店員焼になっていったそうです。大阪らしい話でしょうか。
また、「コナモン」の読み方ですが、大阪では「コ」にアクセントがあり、後は下げるというイントネーションだそうです。関東ではコは低く、ナモンは高いというのが普通と思っていましたので意外でした。
それよりもっと意外だったのは、このイントネーションは「ポケモン」の読み方と一緒だということです。大阪ではポケモンもポが高いのと驚きました。