石川さんの著書に接したのは一番最初はかなり以前に「SF西遊記」という本を読んだ時からですが、その後大江戸神仙録といった本も読みました。大江戸シリーズというのがかなりの数に上るようですが、これらの著作の過程で江戸時代について色々と調べられたようです。
この本もそのために集めた資料についてのもののようです。
相撲番付というものは現代でももちろん大相撲のものが毎場所必ず作られていますが、その様式は江戸時代からのままであることは知られていると思います。真ん中に蒙御免、開催日時、行司が書かれ、東方、西方にそれぞれの横綱、大関から幕下に至るまで、字の大きさも変えたものが独特の字体で書かれています。
江戸時代といっても幕末の頃には、そのような番付の様式になぞらえて様々な事物・人物の番付を作り売り出すということがよく行われたようです。それを著者の石川さんが蒐集し、さらに書かれている内容をひとつひとつ解析されています。
例えば、料理茶屋の番付ですが、勧進元の位置には山谷の八百善という名前だけは聞いたことのある有名料理屋が書かれ、深川平清というこれも有名なところが並べられており、東の大関(横綱というのは通常はなかった)には采女が原の酔月楼という、これはちょっと下のところが載せられています。
鰻やでは行司役には大和田という店の本支店が並べてあり、どうやら当時はこの大和田一統が有力であったようです。
店ばかりでなく、米の産地番付というものもあり、それは現代とは相当異なり、大関には遠州掛川米と肥後米とあり、今のように東北や北陸が高級米となっているのとは差があります。
他にもいろいろな物事についての番付というものが作成されており、江戸時代も今と同様の感性で捉えられているということが判ります。
ただし、著者の石川さんは江戸時代の事情を研究することが多いあまりに、欧米文化を持ち上げて日本文化を貶めるような人には批判的であり、諸所にそのような人への当てこすりが見られます。実際にそうなのでしょう。少しはそのような傾向も減ってきたと思いたいところです。