民間企業で技術者であった宮村さんが、退職して東大の中尾先生のもとで勉強しなおしをするということになり、民生品(家庭用の機械等)のリコールを調べると言う活動を始めました。機械工学の研究としては珍しい方向性のようですが、こういったものを大学側から行うと言うことは貴重なもののようです。
現代の日本で大きなリスクと言えるような、年間1万人近い人が亡くなるようなものは、交通事故、家庭内の事故、「ハイリターン」の事故だそうです。ハイリターンの事故とは、レジャーや金儲けなど、大きなリターンを目指して起こってしまう事故と言うことです。
これらの事故は危険性はそれぞれあっても、人々の許容範囲は大きく異なります。交通事故は多数の人が死傷しても利便性のために車の使用は止められない。ハイリターンの事故は自己責任なので、あまり問題にされない。家庭内の事故もあまり注目されることは少なく、軽視されているようです。
そのような状況の中で、民生品の起こす事故というものは非常に(過大に)責任を追及されているようです。本来ならば使用期限が過ぎているような寿命を過ぎた製品の事故でもメーカー責任を問われることがあります。メーカーの製造責任というものがどんどんと拡大されて行っているようです。
しかし、一見部品の寿命のように見えたり、使用者のミスによるもののように見えても、その中には設計で防げるようなものもあり、そこまで考えた設計になっているかどうかも問われるようです。つまり、耐久性を損なうような設計と言うのも存在しており、それは出来上がったすぐには判らず、年月が経って老朽化が始まってから初めて判明するようなものもあるということです。
例えば、電気配線を収める箱が湿気にさらされ、そこに埃がたまってトラッキング現象を起こして火災が発生すると言う事態になることがあっても、その埃のたまる下の素材を不燃性のものにしておけば、火災を起こす確率は低下するそうですが、それをしていないのは設計の責任ということです。
なかなか示唆に富んだ指摘が多く参考になりました。