飛行機の事故で死ぬ確率は自動車よりもはるかに低いという話ですが、この本を見るとあまりにも多くの事故があったということが分かり、あまりいい気持ちはしません。
特に、これから飛行機で旅行をしようという時にはそうでしょう。
飛行機が落ちるということの原因としては、天候の脅威、飛行機の機体の構造の問題、その中でも特にエンジンの不具合、人為ミス、自動化の影響、航空会社の経営の問題まで多岐に渡っていますが、それぞれについて豊富な事例が挙げられています。(そこがますます恐怖感を増すことにもなります)
しかし、現在でもそうですが飛行機事故が起きるとその責任を問うというよりは原因を深く調査するということが行われています。
これは飛行機の運行が始まった当初からのことで、その原因調査により多くの対策が取られ、事故の確率を下げることにつながっています。国際民間航空機関(ICAO)はすでに1951年に「事故の調査の目的はその再発防止にあり、とがめたり責任を追求することではない」という方針を採択しています。
犠牲者の遺族からみれば責任を取らせるということが求められるのでしょうが、それを軽減してでも対策につなげるという方向性は有用なものなのでしょう。
しかし、気象については飛行機事故を契機として知られていなかった現象が解明されたということも多く、マイクロバーストと言う急激に降下する冷気塊などはその例だそうです。
また、翼への着氷も昔はそれほど危険と思われていなかったのですが、ごく薄い氷が翼を覆っても浮力が急激に失われるということも事故を通して分かってきました。
機体では金属疲労の限界についての認識が飛行機事故を通して深まっていったようです。
それでも部品交換は航空会社の経営に直結することだけにすべて安全域で交換するということもなかなかできないようです。
とはいえ、エンジン固定部品が破壊されて離陸中にエンジンが2つ脱落した事故が2回続けて起きたなどというのはちょっと言葉を失います。
それでも、そういった原因より多いのはやはり人為ミスのようです。パイロットだけでなく管制官やその他の関係者も含めてあらゆるところでミスが起きそれが事故につながることがあります。
そして、それを減らすつもりで運転の自動化が進んでいますが、それがまた思いもせぬプログラムの不具合で事故になったりするということもありました。
また、会社の経営状態が悪化するとどうしても事故率も増えてくるようです。修理点検の徹底がおろそかになったり、パイロットの給料も低下するためにその質が低下するとか、士気が落ちるとか、いろいろの影響が出そうです。
この本は20年ほど前の出版ですのでまだ格安航空というものがそれほど多くなかったと思いますが、今はそのような会社がぞろぞろと出現しています。安全性は大丈夫かと思ってしまいます。
これだけ多くの人の犠牲の上に今の飛行機の運航というものが成り立っているんですね。心して乗らねば。