爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

失業率低下って言われてもね。

2月の失業率は2.8%と22年ぶりの低水準とか。

アベノミクスのおかげかどうかは知りませんが、首相や政府高官のしたり顔が目に見えるようです。

 

www.jiji.com

しかし、上記ニュースではないテレビニュース(どこだか忘れました)によれば、特に求人の多い業種は「飲食業、宅配業、土木工事」だとか。

 

なんか、笑っちゃうような業種ばかりです。

 

低賃金・長時間労働で有名なのが前二者、おそらく若くて丈夫な人たちでも今その業界に就職するのは二の足を踏むというところではないでしょうか。

 

さらに、土木工事などいくら高給を見せられても普通の人間が飛び込める社会じゃないし。

 

これは想像ですが、おそらく他に求人が多い職種は「介護士、保育士」といったところでしょうか。

 

保育士でもほんの少し賃金を上げるとかで、なんとか人手の確保をしたいとしていますが、元々がひどい薄給ですから多少上げたところでね。倍と言っても不思議ではない程度でしょう。

 

 

単に求人数を合計するだけのような、粗雑な統計をしているからこうなります。

求人はしても充足しないのはなぜかということが分かるような集計をしたり、就職してもすぐに退職する回転率を考慮したりということをすればその業界の雇用形態の問題が分かるでしょう。

 

宅配業界でも労働過多が大問題ですが、「人を増やせ、給料を増やせ」ですぐにも片付きそうです。

それができないのは料金への転嫁が難しいということなのでしょうが、「皆が上げれば怖くない」でなんとかしていかなきゃしょうがないでしょう。

 

 

労働環境の悪化というものが常態となってしまったような社会で、人手を確保するにはどうしなければならないかという常識が失われてしまったようです。

 

「人が資本」と口でだけは言う経営者も居るようですが、本当にそう思うなら金で態度を示せというところでしょう。

「ヒトはなぜヒトをいじめるのか」正高信男著

著者の正高さんは「ケータイと持ったサル」などの著作で有名ですが、サルなどの霊長類研究が専門の比較行動学者です。

 

本書出版は2007年ですが、福岡や神戸でイジメを原因とした中高生の自殺が相次いでいたころですので、それを霊長類などとの比較で考えようという、出版企画があったのでしょうか。

 

まあ、「サルにはイジメはない」と言われてもあまり解決の足しにはならないようですが。

 

 

ヒト以外にはイジメはないと言っても、縄張りやメスをめぐって闘うことはどの種でも見られることで、そこには場合によっては生命に関わるほどの闘争が見られます。

そういった生存競争は、しかし別の動物には向けられることはなく、必ず同種の動物に限られるそうです。

 

そして、サルなどの群れを作って生きる動物の場合は序列決定の闘争というものもあります。

序列が上のサルは圧倒的な力を見せつけ、下位のサルは服従しますが、時々は序列変更の戦いもあるようです。しかし、慢性的に下位のサルをいじめるということはないようです。

 

 

イジメが起きるのは、ある集団の中での二者間のトラブルからです。

そして、その行為が常習化していくのですが、そこには必ず他のメンバーの態度が関わってきており、周囲が傍観していればイジメ行為がエスカレートします。

 

イジメ自体は世界中どこでも存在していますが、傍観者が増え続けるというのは日本で特に強く見られる事態のようです。

 

著者は、イジメの加害者被害者よりこの傍観者の生態を細かく記述しています。

 

核家族で専業主婦の家庭の子供に傍観者に廻る立場を取ることが多いのではということです。

また、ゲーム好きな子供に傍観者が多いのではとも。

 

父性不在がイジメを生むのかどうか。

イジメが起きたときに止めに入る子供は家庭でも親と良好な関係があるという指摘もあるそうです。

 

なお、ケータイをはじめとするIT化した社会というものは、かつてあった地域共同体を崩してしまい、そこでの社会が子供を見守る機能も失わせてしまいました。

かえってケータイを使ったイジメも激しくなっています。

 

イジメをめぐる報道も過熱し、かえって関係者をマスコミが「イジメている」としか考えられないような事態にもなっています。

 

巻末にポツンと置かれた言葉「イジメを克服するには”一人力”を養うことに尽きる」というのがやや唐突に感じますが、まあそれが一番効果的かもしれません。

 

ヒトはなぜヒトをいじめるのか―いじめの起源と芽生え (ブルーバックス)

ヒトはなぜヒトをいじめるのか―いじめの起源と芽生え (ブルーバックス)

 

 

 

教育勅語の「真意が伝わる」とは

森友学園事件で、幼稚園での教育勅語教育などの実態が明らかになり騒然としていますが、これについて政府は「教育現場での教育勅語活用は否定されない」などと言うことを語っているそうです。

 

news.yahoo.co.jp

彼らの言い分では、その内容に親子や夫婦などの道徳に関するものもあり、そこまで否定することはできないといったものですが、まったくの妄言にすぎないものです。

 

 

この言い分を聞いて思い出したのが、特に与党関係者に多い失言・放言の際に、「言葉尻を捉えて批判されており、発言の真意が伝わっていない」という言い訳です。

 

教育勅語に置いての「親子や夫婦の道徳」なるものは、まさにこの「言葉尻」に過ぎないものであり、その真意は「天皇のために命をかけろ」ということです。

その全文を通して文章を理解すればそうなります。

 

部分的に良いことも書いてあるなどという言い方は、本質を覆い隠し言い逃れようという彼らのいつものパターンの裏返しであり、同根の部分から発するものでしょう。

花見の思い出

この先、週末まで雨が降りそうで、今年は花見は実行不可かもしれません。

そこで、人生を振り返って(それにしても長い時間だ)花見の思い出などを書いてみましょう。

 

花見の時期から考えると、1歳と4ヶ月ほどの頃に東京の王子の飛鳥山公園に花見に行ったということを親から聞いたことがあります。しかし、さすがにこの思い出はありません。

 

名古屋の小学校に入学した時、もう半世紀以上も前ですが桜が咲いていたような記憶が少しあります。しかし、入学時の記念写真を見てみると4月1日でまだ校庭の桜はチラホラと咲いている程度だったようです。

 

中学以降は神奈川県だったので、入学時期はだいたい桜の開花の時期と重なります。

特に、花見に出かけたということもないのですがやはり桜は学校関係の行事とよく似合います。

 

 

会社に入ってからは花見といえば職場の人たちとの宴会でした。

 

今も覚えているのが入社してすぐに赴任した熊本県八代で、ブルートレインで東京から遠路はるばるたどり着き、その足で会社に挨拶に行ったら上司から「今夜は花見だから」の一言。

そして先輩に連れて行かれたのが、このところ何度も開花状況を速報している「八代城跡」でした。

さすがにやや散り際でしたが、そこにシートを広げての宴会です。早速、焼酎と合成清酒の洗礼を受けました。

周りの人々の話す言葉もほとんど理解できない方言で、緊張とともに不安で一杯というものでした。

 

 

数年してから、当地で活動していたコーラスグループに入れてもらい(現在、再度加入しているグループです)そこの花見が開催されました。

なぜか、この地では普通花見の宴会を開く上記の八代城跡ではなく、近くの公園でした。まだ夕方の薄暗い間は良かったのですが、そのうちに暗くなると照明もなく、真っ暗な中で酒だけ飲むという不思議な花見でした。

 

 

その後、神奈川に転勤で移り住みました。藤沢に住んでいた時、子供をつれて藤沢市内随一の花見の名所、伊勢山公園に行きました。

これは小田急藤沢本町駅のすぐ上にある高台で、桜が頂上から中腹まで数多く植えられているところです。

実は、出身の高校がこのすぐ近くで、桜がきれいなのはよく知っていましたが、花見に出かけたというのはこの時が最初(で最後)でした。

ちょうど花見の盛の時期で混んでいましたが、家族4人で楽しめました。

 

 

花見ということではないのですが、石川県に出向し単身赴任していた時にアパートの近くの桜がとても美しく、見惚れました。

それまで経験のない雪国の冬の厳しさに驚いたのですが、春になり桜だけでなく一斉に様々な花が咲き乱れる様子には、春が来た喜びが一層大きいものと実感できました。

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そして、仕事も辞め熊本の家に帰ってきてからは、花見と言っても家内と二人で平日の昼間に弁当と缶ビール1本を持って、例の八代城跡に出かける程度です。

今年はちょっとチャンスがないかもしれませんので、一昨年の花の様子を。

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昨年は花見を楽しんだ数週間後にあの地震に見舞われました。今年は無事に過ごせますように。

 

「絵でわかる カンブリア爆発」更科功著

「カンブリア」というと最近ではテレビ番組の方が有名かもしれません。

 

カンブリア紀」と名付けられた時代があり、5億4100万年前より始まった古生代の始めの地質時代を指します。

この時代に数多くの動物の系統(門)が出現し、それ以降のほぼすべての系統が出揃ったように見えます。

そして、それ以前の時代の地層にはほとんど化石が見られず、その時代に急に爆発的に動物種が表れたために「爆発」と名付けられました。

 

本書は生物学者の更科さんがそのカンブリア爆発について一般向けに解説されているものです。

 

 

ダーウィンの時代に知られていた最古の化石は「三葉虫」でした。その三葉虫が表れたのがカンブリア紀でした。

三葉虫は動物としてもかなり複雑な構造を持ち、複眼という高性能な目や自由に歩き回れる脚、硬い外骨格を備えた高度な複雑性を備えていました。

そして、三葉虫以外にもその時代の地層からは多種の複雑な構造を持つ動物の化石が発見されました。

カンブリア紀以前の先カンブリア時代の地層からは当時ただの一つも化石が見つかっていなかったのと比べ、その多様性は驚きでした。

 

その時代に現代につながるような動物の多様性が突如始まったと見られ、それをカンブリア爆発と名づけられたのでした。

その定義は「現生の左右相称動物の多くの門が化石記録に突然出現したこと」となっています。

 

 

生命の誕生は地球誕生の後、比較的早い時期に起きたようですが、長い間単細胞生物のみの世界でした。

しかし、その作り出した二酸化炭素が関与し、温暖化と急激な寒冷化が何度も訪れます。

その中で特に激しい寒冷化が「スノーボールアース」と呼ばれる赤道まで含めて全地球が凍結してしまった3回の全球凍結です。

これが22億5000万年前、7億年前、6億5000万年前に起こりました。

その環境では地上のほとんどの生命は死滅してしまったのですが、ごく一部の地域、おそらく火山の噴火口のような熱水が得られる場所だけでわずかな生物が生き残りました。

 

そして、火山から放出される二酸化炭素が蓄積し全球凍結も溶けてしまいます。

そうなると生き残っていた生物が急激に繁茂することになります。

以前は、この最終回の全球凍結からの温暖化がカンブリア爆発の原因となったとも見られたのですが、そこの時間差がかなり大きいために直接の原因とは考えられていません。

 

 

結論だけ書いてしまうと、全球凍結からの回復後のエディアカラ紀にすでに徐々に動物の多様性が準備され、遺伝子の多様性が増していたのですが、それがカンブリア紀に入り動物の進化によって捕食動物が出現し他の生物を食べるようになり、それが契機となって捕食される側も進化することが必要となり、一気に変化したというのが理由のようです。

 

それには、三葉虫に見られるような眼の進化も重要な役割を果たします。捕食側、被捕食側のいずれにとっても高性能の眼というものは重要な要素でした。

 

 

巻末に記述されているように、もしもカンブリア紀の爆発開始の時点で存在していた生物が現実のように動物の祖先ではなく、キノコの祖先であったら今頃はキノコから進化した生物が地球上に満ちていたかもしれません。

偶然かもしれませんが、このような生物に満ちた地球になってしまったのがカンブリア爆発であったということです。

 

絵でわかるカンブリア爆発 (KS絵でわかるシリーズ)

絵でわかるカンブリア爆発 (KS絵でわかるシリーズ)

 

 

「やさしい調査のコツ」森靖雄著

本書著者の森靖雄さんは、学生時代から調査を習得しその後も各所でそういった事業を担当してきた「調査屋」さんで、その後は大学で調査員養成といった活動をされて、本書執筆当時は東邦学園大学教授という方です。

 

そして、本書の主な想定読者は、大学で地域調査などを専攻する学生さんです。

そのため、その記述は非常に微細なところまでに及び、たとえばp52、「服装はとくに着飾ったり堅苦しい服装で行く必要はありませんが、今流行のわざと汚れたり穴のあいた衣装を着るチープファッションはいけません」

とか、p53「話のなかにしばしばタメ口が出てくると相手は馬鹿にされたり見下されたような気持ちになります。」など、先生が実際に学生を相手に苦労して指導されている様子が見えるようなところまで、しっかりと記述されています。

 

ここで言う、調査とは、例えば地域の産業の調査や景気の良し悪しなど、実際に現地に出かけて行って住民から聞き取ったりアンケートをしたりというものを指しています。

 

近年は、悪質業者が調査を騙って住宅に入り込むという被害も頻発しているために、こういった調査も非常にやりにくくなってきているようです。

そのための対策として、自治体や商工会などと連携して行うという話も書かれていますが、逆にこういった人が絡むと嫌がる人も居るということも指摘されています。

 

 

調査と言ってもいろいろな段階があります。

 

まず、関連資料を探す「文献調査」

そして、現場を見てくる「踏査」

次に、話を聞いて実情をつかむ「聞き取り調査」

さらに統計的データを集める「アンケート調査」

 

そして、得られた結果をまとめ、分析し報告書を書くという各段階にわたって細かく指導するという、まさしく大学生の教科書にふさわしいものになっています。

 

 

「アンケートの作成」という点については多くのページを使って細かく記述されています。

これの作り方次第で得られる結果の意味というものが大きく違ってきてしまいます。

 

多くのことを聞きたいからと言って、何ページにも及ぶアンケートを作ってしまうと調査相手がまともの書く気を失ってしまい回答数が減ってしまいます。

実際にあった例では、アンケート質問用紙を折り返しただけでその裏側は見ずに表だけ書かれて帰ってきた回答が多かったとか。

あくまでもアンケートを受ける側の気持ちになって作らなければ難しいようです。

 

 

また、できれば回答者の様々な属性(性別、年齢、職業、収入等々)で結果をまとめ直す「クロス集計」の技法を駆使したほうが結果の解釈がやりやすく、その価値も上がるのですが、こういった属性は個人情報の塊であり、特に昨今はなかなか聞きにくいものになっています。

また収入額など聞いても答えない回答者が多いということもあり、その設問の仕方には工夫が必要なようです。

 

 

なお、自治体や政府などが行う「世論調査」にも問題がある設問があるようで、本書にもその例としてある民間団体に委託して中部国際空港建設について地域住民にアンケートを取った事例が載っています。

 

「設問 中部新空港が常滑沖に建設されるということについて、どのようにお考えになりますか。

 1賛成 2必ずしも反対ではない 3反対 4分からないなど」

というものですが、「必ずしも反対ではない」という項目がありながら「必ずしも賛成ではない」という項目は設けられておらず、設定が不正となっています。

 

また、「誘導質問」というものも頻繁に見られるもので、設問の順番を操作することにより最後の質問の答えが偏るということもよくあるようです。

 

新版 やさしい調査のコツ

新版 やさしい調査のコツ

 

 

いまさら、「調査マン」を目指すということもないでしょうが、もしもそうなったらこの本のようにやれば良いのかなと思わせてくれるものでした。

 

 

八代城跡の桜、一応開花はしました。

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これが本日(4月3日)の熊本県八代市、八代城跡の桜の状況です。

木の場所によってかなり差がありますが、城跡の中心の石垣に囲まれ気温の高いところでは三分咲き程度、石垣の上や城外では数輪がチラホラと言った程度。まだ花見とはいけないようです。

(まあ、花はともかく酒が飲めれば良いという人は大丈夫でしょうが)

 

しかし、今日も朝は寒かったものの昼近くなって20℃くらいには上がってきました。

一気に開花が進むかもしれず、また週後半には雨が続くという天気予報なので、もしかしたらあっという間に満開、そして散り始めるかもしれません。

 

なお、今月からこの八代城跡の堀を周遊する観光舟が運行を始めました。

1回1000円ということですが、乗る人居るのかな。

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