就職氷河期は若干緩和されたとは言え、大学卒業生にとって就職というものは大問題であるのには変わりはないのですが、それだけ苦労して入った会社も数年で退職してしまう人が多いということです。
これはやはり会社選びというものを失敗してしまっているのでしょう。
この本の著者の渡邉さんも、大学卒業後最初は日本経済新聞社に記者として入社したそうですが、入った早々まったく記者という職業が自分に合わないことに気づき、3年ほどで退社し、今度は外資系のコンサルタント会社に転職します。
しかし、そこでもコンサルという職業にそもそも向いていないということに気づき、ようやく31歳にして自分で会社を作り起業するという選択をしました。
そこで、企業情報をまとめるという業務をネットを利用し行っているのですが、そこでは自らの体験を活かし、若年で会社退職を選んだ人たちに直接会って話を聞き、企業の本当の姿を調べるということをしているそうです。
その資料等を見ると、現在の日本の企業(主に大企業)がその内容において大きな差があるということが分かります。
職業力が付けられ、転職してもやっていけるような仕事ができるかどうかという、仕事指標という観点からみても、労働時間や社内の人間関係、女性登用等の生活指標から見ても、報酬や福利厚生、人事評価や雇用安定性という対価指標から見ても、大企業といえどそれぞれ大変な違いがあるようです。
その違いに気が付かず、自分に向いていない企業に一所懸命努力して入社し、入ってから違うということに気がつくというのが早期退職をする若者たちの行動なのです。
なお、この本の中で示されている企業情報はすべて著者が実際にその企業から退職した人から得たもので、名称等もすべて実名で書かれています。
ただし、調査期間は2003年から2006年までで、本書自体2007年の出版ですので現在の状況とは異なることもあるでしょう。(大抵は悪化しているでしょう)
したがって、今から会社を選んで就職しようという人が全面的に信じてしまうのは危険かもしれません。
1仕事指標
転職力が身につくか
一つの会社にずっと勤めるのではなく、有利な条件でどんどんと転職していくという人生を目指す人もいるでしょう。
そういった人たちが選ぶべきなのは、「平均年齢が若い」「人材を輩出している」「規制なし&軽薄短小業界」です。
具体的には、外資金融、外資コンサル、商社、ITベンチャーというった業界です。
間違っても行くべきではないのが「インフラ(交通・電気ガス・NTT)」「大手メディア」「国内金融」「電機自動車」といった業界で、こちらは一生骨を埋める人向きです。(ただし、自分はそのつもりでも情勢の変化で裏切られる可能性大です)
2生活指標
働く時間に納得できるか
これには「みなし労働時間制」か「実労働時間制」かの差があります。
みなし導入企業では、「定時って何」というマスコミ・商社群と、「やればやっただけ」の外資金融、IT、コンサルといった区分があります。
また実労働時間制の企業でも、「残業が文化だ」という流通サービス業、「どうせ持ち帰り」のメーカー、金融、知的ブルーカラーという、旧官業系、とくにNTTといった違いがあります。
3対価指標
報酬水準という大問題です。
日本では「マネー教育」というものが学校ではされませんので、会社を選ぼうという学生であっても報酬というものがどういうものかという知識がほとんどありません。
額面と手取りということもよく知らないのはもちろん、天引きされるものがどこに行くのかということも知らないままです。
こういった点が会社によって大差があるということも知るべきでしょう。
ただし、本書の時点でもこういった制度がどんどんと変わっていきつつあるところであり、たとえば社宅などの福利厚生もどんどんと切り捨てている最中でした。
家族手当や交通費すら廃止という企業も出てきており、額面の報酬額が高くても実際はさまざまな費用がかかるということもあり、慎重に比較しなければいけません。
一応、企業から平均年収などといった数値が発表されていますが、これも社員の平均年齢によっても違い、社員の中で採用区分による差(総合職と一般職といったもの)が大きく違う会社も多く、簡単な比較はできません。
今のところ、一番高い報酬なのは、民放キー局、大手出版、大手商社、新聞社といったところですが、10年後には激変の可能性もありとしてます。
ハイリスクハイリターン、安定度はなしというところでは、外資系投資銀行、コンサル
将来不安なエリアとしては、WEB系、ソフトハウス だそうです。
「若者は」という本ですが、この爺さん(私)でも40年前に会社選びでは見事に失敗しました。
とはいえ、最初に選んだ会社には入社試験で落とされ、最後に引っかかったところに入ったのであまり文句も言えません。
しかし、「報酬」が会社によってこんなに違うということはまったく知らなかった。
まあ、ほとんど残業なしの定時退社で過ごしていましたので、ここもあまり文句も言えませんが。
まあ、就職する人は知っておく方が良いのでしょうが、だからといって入れるわけでもない会社のことを調べてもね。
10年でさらに状況は悪くなってしまったということなんでしょう。