爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「私たちはなぜTPPに反対するのか」原中勝征編著

今まさにその各国間の交渉が大詰めを迎えているTPPですが、TPP阻止国民会議代表世話人で前日本医師会会長の原中さんが、2014年4月の時点でTPPに反対する多くの人(内外ふくめ)の文章をまとめた本です。

日本の農業が破壊され、一方工業製品の輸出には利益があると言われているTPPですが、実際はそのような面は微々たる影響のみであり、大きなものが隠されていることが分かります。
農産物の関税云々が問題視されていますが、実際の交渉の中ではそのようなものはほとんど重要視されておらず、その他の多くの面でアメリカの都合のよいように交渉が進められています。

特に問題が大きいのはISD条項でしょう。これは「投資家対国家の紛争解決条項」と言われるもので、海外に進出した投資家がその国の政府の決定などで不利を蒙った場合に世界銀行の傘下にある国際センターに提訴して解決するというものです。これは外国投資家と主権国家の直接の紛争を国際組織(それもアメリカの強い影響下にある)にすぐに持ち込むことができるというもので、国家の主権と言うものをその国の内部でも犯すものです。
実際に世界各地でこのような提訴が起こされ、海外企業がその国の政府から巨額の賠償を得た上に政策を曲げられるという事例が出ています。
これが通れば、自国内での食品の規制や海外食品(BSE疑い牛肉や農薬規制など)の輸入規制、国民健康保険などの相互扶助制度、自治体の地元優先発注、地元中小企業向けの低利融資など様々な国内活動が海外投資家に損害を与えるとして提訴される恐れも強いものです。

このようなアメリカのグローバル企業の強欲を押し通すような条項は、現在のTPP交渉ではほぼ合意に至っているということです。どのような交渉なのか、明らかになってはいませんがそこも問題です。
現在の交渉ではニュージーランドが乳製品の貿易条件で無理を言っているかのような報道がされています。ほかの点は大丈夫なのか、この本の著者たちのような人々の意見を検証する報道が期待されます。