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爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

エネルギー文明論「化石燃料5つの大罪」

エネルギー文明論

現代文明が化石燃料のエネルギーに依存しているということは誰にでも分かることでしょう。
しかし、それは実は人類の生存を脅かす道に真直ぐに導くものであったと言わざるを得ません。

化石燃料の大罪とはなんでしょう。
①その一つは「資本主義と科学技術の大発展を促したこと」です。
どちらも実は豊富で安価なエネルギーが簡単に得られると言う状況が追い風となって得られたものと言えます。これには以前のエネルギー源であった木材の薪炭や、今後のエネルギーと言われながら独り立ちできそうもない原子力や太陽光、風力と比べてはるかに優れた化石燃料の存在が大きかったと言うことです。
科学技術の発展にはエネルギーが豊富にあることが必要であったと言うことは分かりやすいことだと思います。物理や化学の発展とエネルギーとは密接に関わっていると言うことは直観的にも分かることでしょう。
それでは、資本主義の発展にはエネルギーがどのように関わっていたのでしょうか。これは「経済成長」という資本主義を支える一種の思想が実は「豊富で安価なエネルギーを注ぎ込むことで成り立っていた」からに他なりません。もし、そのような安価なエネルギーが無かったとしたら経済成長などというものが起こせたでしょうか。
実は「経済成長と安価なエネルギーは不可分のもの」なのです。

②次に、汚染物質が多く含まれていたために非常な環境汚染を招いたことです。石炭も石油も燃焼により硫黄酸化物や窒素酸化物、そして煤煙などを排出することが避けられません。
これは産業革命が始まってすぐのイギリスで大変な汚染を発生させ、直接の死者も多数出ると言った状況を作り出し、酸性雨で近隣諸国の森林も枯らすといった影響をもたらしました。日本でも1960年代から1970年代にかけては都市部で特に大変な大気汚染を引き起こしましたし、現在の中国の状況も人間の生存を直接脅かすものになっています。

③忘れてはいけないのは、食糧生産にエネルギーを投入することで非常に生産量を増大させ、その結果として人口の爆発的増加をもたらしたことです。アフリカでは飢饉に苦しむ人々が膨大な数に上るといわれていますが、そもそも食糧が少なければそのような人口増加もなかったはずです。
日本の石油漬け農業という話は有名かと思いますが、多かれ少なかれ他の国の食糧生産にもエネルギーが投入され生産量が増大しています。さらにそれらが安価なエネルギーを用いる大量輸送という手段で世界中にばら撒かれ本来ならば食糧生産に不向きで多くの人口を保持できない地域にも住めるようになっています。
畜産業や漁業もエネルギーが無ければ生産量は激減するでしょう。今さら手漕ぎの舟で出漁しても取れる魚はわずかなものです。

④特に石油の大罪として、内燃機関つまりガソリンエンジンの燃料として有用であったために現代の「自動車社会」の成立を促し、その結果として社会の構造を大きく変化させてしまったと言うことがあります。変化自体が悪いことかどうかということは一概には言えないかもしれませんが、徒歩やせいぜい牛馬に移動手段が限られていた時代と、現代の自動車社会では家族、一族そして地域社会というものの構造が基本的に異なっており、それは決して良い方向とは言えないということだと思います。
さらに交通事故で死亡したり重度障害を負う人々が多数であるということも無視できません。自動車のあまりにも巨大な利便性のために不問に付されているような事故の存在ですが、全世界で1年に数十万人が死亡という事態は決して軽く考えられることではありません。

⑤そして最後の化石燃料の大罪として「やがて無くなる」と言うことが挙げられます。
先に述べた4つの大罪があったとしても、いつまでも供給できるのであれば一つ一つ対策を立てていくのは不可能ではないことでしょう。しかし、化石燃料は古代の植物や藻類の生産物から生まれたものであるので、その量には限りがあり、今でも着々と生産されているということが無い以上はやがて無くなるというのは避けられない運命です。
そのことは、前の4つの影響を逆に動かしてしまいます。まあ、環境汚染がなくなるのは良いことかもしれませんが、資本主義が存続できなくなるとか、自動車社会が運営できなくなるということは社会の在り方に大きな影響と混乱を与えるでしょう。
その中でも一番大きな問題はエネルギー供給が乏しくなれば食糧供給も難しくなるという点です。膨大な人口を抱えている現在ではその行先は想像するだけでも怖ろしい未来につながります。

化石燃料の利用で人間社会は一見したところこれまでにない繁栄を手に入れたように思えます。しかし、その先は困難と崩壊に至ることは限りある化石燃料という天然資源に依存している以上は避けられません。
化石燃料は社会にとって麻薬のようなものです。いずれは社会の死に至るものです。麻薬中毒の治療と同じように、徐々に遠ざけていく治療法を取っていかなければなりません。麻薬治療と同様にその禁断症状は厳しいものでしょう。しかし、それに耐えなければ人類と言う種の未来はないと考えるべきです。

化石燃料の大罪」という題をつけてしまいましたが、本当は化石燃料自体には何の罪もないのは当然です。それをおかしな使い方をして、勝手に自分たちの未来を危うくしている人間にすべての責任はあります。