教育評論家の佐々木さんの本ですが、経済のグローバル化という一見自然な流れのようで実はほとんどすべての世界の人々の生活を破壊してしまう動きに対して問題意識を強く持ち、特に教育の分野から大変な状況を告発しています。
その主張は間違いの無いことだと感じますし、それが今後も深く暗く続いていくものと思うと暗澹とします。
教育の民営化という動きがどんどんと強まりますが、そのお手本となるアメリカやイギリスの実情は実際はほとんど紹介されることもないようですが、ひどいものです。一部のエリートだけを救えるように高級教育機関(値段が高級という意味です)がある一方で一般の公立学校は壊滅寸前です。学力低下も校内暴力も日本の比ではないようです。
校内暴力もまだ日本では校内で処理しようと言う努力がありますが、イギリスではそのような生徒は退学させろと教員が主張し、できないと校長を批判するそうです。退学しても行き場も無く犯罪者予備軍になるばかりです。
労働環境がさらに悪化していく中で、そうは言っても就職しなければならない生徒たちの教育も悪影響を受けるばかりです。その中で少しでも有利にという願望で生徒や親が必死に頑張りますが、そのような努力もほとんどは無駄になります。ごく一部の富裕層の子弟しか富裕になれない構造が出来上がってしまっています。
いじめや校内暴力など、日本特有と考えたがる風潮もありますが、先進国も途上国も含め全世界で起こっています。すべての国の人類を不幸に陥れているのはグローバル経済を推進する世界規模の企業で、そこには各国政府の統制も利かず、政府もかえってそれら企業の言うなりです。
当分はこういった状況は続くのでしょう。
学力が高いという北欧各国はこのような動きに対し高福祉、労働者重視の政策をまだ堅持できています。それこそが学力維持に必要なことなのでしょう。