著者は20年以上ヨーロッパ在住、現在はプラハに住むというジャーナリストで、ヨーロッパ各国に出歩いているということです。
日本では「欧米」と十把一絡げに語られることが多いのですが、ヨーロッパと一口で言ってもその一国一国は千差万別。相当違うということを感じてきたそうです。
そういった各国の違いを主に人の性格などの違いを通して書かれたものです。
なお、たとえばイギリスと言ってもその中にはスコットランドやウェールズなど民族も違う地方があり、スペインにもカタルーニャがあり、バスクもありと同様に国内でも相当異なる人々が居るというのもヨーロッパの国というものですが、さすがにその一つ一つまで細かく書いていると大変過ぎるということでしょうか、そこまでは詳述はされていないようです。
まあ、あくまでも各国の主要民族を中心として他国との比較ということでしょう。
多くの国の記述のあとに、エスニックジョークという例の「ドイツ人は何々、フランス人は何々、しかるにこの国の人は」というものが引用されています。
ヨーロッパではこれがけっこう多く語られているのでしょう。それだけ、違いも明確なのかもしれません。
東アジアではこれが話にもならないというのはそれだけ未成熟な関係なのでしょう。
なお、本書では著者のお二方が実際に出かけてそこに住む人々と交流を持った国に限って描かれているということで、行ったことのないウクライナとベラルーシ、バルト3国は記述がないということです。ということは他の国はすべて交渉範囲だということで、それもすごいことを思います。
一つ一つ取り上げるのも難しいので、特に印象に残った(これまでの概念が変えられた)ことだけを紹介しておきます。
フランスでは個人主義が確立し徹底しているようですが、その反面かつてのブルボン王朝全盛期からの格式の記憶も強く、会社や公共の場などでも人々の優先順位を考えるということが皆の身についていて、それができない人は無教養で非常識な人間とみられるということです。
例えば親戚一同でのパーティーなどでも部屋に入る順番、席順などは暗黙のうちに皆が了解しており、それを守る習慣は今でも生きているとか。
他の本(教育関係)を読んだときにも見た話ですが、フィンランドはOECDの実施する15歳の生徒を対象とした学力調査で常に上位にランクされ、特に科学的リテラシーと読解力では世界1位ということです。
しかもこれだけの好成績を上げながらその年間授業日数は日本と比べても40日も少ない年間190日、塾に通う生徒もおらず家庭での勉強時間も少ないとか。
この教育制度の優れているところは、きめ細かい生徒一人ひとりに適した教育が為されるためで、一クラスの生徒数は25人以下、押しつけの詰め込み教育ではなく自主性尊重といったものだそうです。
日本で批判されお蔵入りにされた「ゆとり教育」と通じるものがありそうです。
まあほとんどヨーロッパ人の知り合いもありませんので、応用する機会もないでしょうが、面白い知識と言えます。