爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「検索の新地平 集める、探す、見つける、眺める」高野明彦監修

インターネットで代表される電子情報空間には莫大な情報が収められていますが、その中から必要なものを効果的に探し出す検索というものがなければ何の利用価値もありません。

 

検索と聞いてまず思い浮かべるのは、グーグルやヤフーといったウェブ検索サービスでしょう。

また、何か一つの特定分野に絞った専門ポータルサイトというものの多数存在しています。

 

こういった検索というものの現状と未来を、多数の専門家が分担して書いたのが本書です。

第1部多様化する検索の現在では、検索エンジンの歴史や構築方法。

テキスト検索、画像検索、時空間データの取扱、について。

第2部これからの検索では、新しいウェブの構造化や知識の共有方法について。

 

ここまで膨れ上がった情報空間を活用できるかどうか、検索次第ということです。

 

現在では圧倒的な地位を占めるグーグルも、スタートしたのは1998年でした。

すでに検索サービスはいくつも発表されており、その運用もされていたのですが、彼らはウェブページの被リンク情報活用という方法で割り込んできました。

このページリンクという技術を様々な検索サービス会社に売り込んだのですが、それらの会社ではその価値が分からず、結局自分たちで会社を立ち上げて始めたそうです。

グーグルも最初はどういったビジネスモデルで進むかも決まっていなかったのですが、それで突き進んだために現在の隆盛を得ることができました。

 

画像検索も急速に発展しつつある分野です。

これは、セキュリティー分野で重要な画像認識技術ともつながるところで、監視カメラなどの効率化と共通の方向性があるようです。

ネット上の画像データの検索というのはまだ進んでいるとはいえない状態ですが、今後どんどんと進んでいくのは間違いないことでしょう。

 

現代の最先端の技術であり、多くの優れた才能が集中して進んでいるということが分かりました。

 

 

夢の話「工場勤務者の評定も外部委託」

また現役時代の仕事の夢です。

 

工場での勤務のようですが、排水管理の部門です。

実は、40年近く前の新入社員当時に最初に配属されたのが廃水処理のプラントでした。

当時は知らなかったのですが、その機械も導入してすぐのもので、そのためか不具合も多く大変な苦労をしたものでした。

 

夢の中での装置はその時代のものではなく現在の最新鋭機のようです。

しかも、どうやら自分も管理職。部下もいます。

部下の一人はかつての後輩。彼も実年齢はすでに50代半ばのはずですが、夢の中ではいつまでも若々しいままです。

 

管理職として仕事をしているのですが、何か変なのは、周りをウロウロと知らない連中がメモをしながら歩き回っているのです。

それは、「勤務評定外部委託会社」の社員であり、我々の仕事の逐一を評価しながら記録しているのでした。

そのことが心理的に重荷となり重苦しい雰囲気の中プラント運転を続けていると、そのうちに不調になり汚水があふれてきて大変だとういう、あとはいつものドダバタ夢になっていきました。

 

かつては、仕事の目標設定と評価ということには悩まされました。

それで昇給の額やボーナス査定も変わります。

さらに、多くの企業も同様でしょうが中途半端な成果主義導入で中間管理職はさらに苦しまされました。

いっそのこと、夢の中のように評価も外部委託で勝手にやってくれたら本業に専念できて良かったかもしれません。

 

「桜が創った”日本” ソメイヨシノ起源への旅」佐藤俊樹著

桜の花が満開となり、一斉に散っていく光景というのは日本全国同じように見られると思っていますが、実はそれはソメイヨシノ全盛の現代だからこそであり、つい100年ほど前まではそうではありませんでした。

そして太平洋戦争に向かう国情の中で桜への意識が変えられた上に、戦後の開発ブームに同調してソメイヨシノの増殖が始まりました。

桜というものに対しての日本人の感覚というものが、どういうものか問い直す必要があるのかもしれません。

 

桜の種類は、自生種にヤマザクラ群、エドヒガン群、マメザクラ群、カンヒザクラ群の4系統があり、さらに栽培された園芸品種として300以上あるそうです。

これほど多くの種がある中で、現在普通に目にするのはほとんどがソメイヨシノだけになっており、少なくとも7割以上は占めているとか。

特に、関西以外の都市部に植えられている桜は9割以上がソメイヨシノということです。

そのためか、桜の咲いた光景と言えば花だけが枝いっぱいに咲き、どの花の色もほとんど同じであり、さらに散る時も一斉に散っていくというものを思い浮かべられます。

 

しかし、ソメイヨシノが生まれたのはわずか100年ちょっと前、(正確なことは分かっていないようです)江戸幕末から明治にかけての頃です。

それ以前の桜の咲いた風景というものは少し違っていたようです。

 

桜関係の本を見ると、「ソメイヨシノの流行る前はヤマザクラ」と書いて有ることが多いのですが、実はそれほど簡単な話ではありません。

ヤマザクラは主に西日本に自生しており、東日本にはごく一部の温かい地方だけにあるものの、東北や中部にはカスミザクラ、人里にエドヒガンと言った具合に各地で様々な種の桜があったようです。

江戸周辺には潮風に強いオオシマザクラが多かったとか。

一重か八重か、花色が薄いもの濃いもの、葉が出てから咲くか花が散ってから葉が出るか等々、色々な咲き方をしていました。

 

そのようなバラエティ豊かな桜の社会が、ソメイヨシノ出現以来急速に一色に塗り替えられてしまいました。

ソメイヨシノは良く知られているようにすべて一つのクローンです。

必ず接ぎ木や挿し木により増やされており他の種との交配はしていません。

 

ここで誤解があるのは、「ソメイヨシノには種ができない人工的なもの」と考える人が多いことです。

実は桜という植物は自家不和合性という性質を持ち、同じ木の雄しべと雌しべでは受粉できません。

ソメイヨシノは種を作れないのではなく、作った種はまったく違う種になってしまうので、栽培できないだけのことです。

 

ソメイヨシノが出現したのは明治初年のようですが、その後の普及はそれほど急速であったわけではないようです。

靖国神社や上野公園など、桜の名所と言われるところでもソメイヨシノは半分にもいかないほどで、意外に他種の桜が多いことが分かります。

 

しかし、急激に広がったのは実は戦後のことです。

高度成長の過程で多くの新しい街が作られましたが、そこに公園を作り木を植えるとなると一番植えやすいのがソメイヨシノであったようです。

ソメイヨシノは寿命が短いと言われていますが、それは成長が速くすぐに見頃を迎えるからでもあります。

それが、公園造成者たちにとっては都合のよいことでした。

さらに、他種の樹木や桜でも他の種の木はせっかく植えても根付かずに枯れるということも多いのですが、ソメイヨシノはそういった失敗も少なく安心して植えられたということがあるそうです。

 

そのような事実が知られるに連れ、「ソメイヨシノ嫌い」という人も増えてきて、そういった人たちの書く文章も広まっています。

一気に植えられたソメイヨシノも、その50年から70年と言われる寿命が迫ってきました。

この先の桜の光景はどうなるのでしょうか。

 

桜が創った「日本」―ソメイヨシノ 起源への旅 (岩波新書)

桜が創った「日本」―ソメイヨシノ 起源への旅 (岩波新書)

 

 

「わかりやすく〈伝える〉技術」池上彰著

政府や大企業の公式発表でも分かりにくいものが多いのですが、そこには誰に読ませ分からせようと言うのかがはっきりとできていないせいもありそうです。

そのような大きな話ではなくても、誰でも会社で営業のプレゼンをしたり、会議で発表したりすることはありますが、そこでも相手に分からせるという意図ときちんと持たないと成果は得られません。

 

「ニュース解説」という分野では独自の位置を占めている池上さんですが、元々はNHKの記者でした。

それがなぜかテレビ番組のキャスターに抜擢され、さらに「週刊こどもニュース」という番組でお父さん役を11年間務めることとなりました。

子供を相手にして、分かりやすい説明をするという経験が現在のような力を着けるきっかけとなったそうです。

 

この本は、会社の会議で発表するような人たちに、どうすれば分かりやすく自分の考えを伝えられるかということを気づかせるように書かれています。

とは言っても、一部のテクニックを除けばそれ以外の状況でも十分に適用可能な考え方というものが分かるようになっています。

 

まず、「話の地図」を相手に示す。

全体像が分かるように最初に「リード」を付けると、聞く方も安心できます。

リードとは話の内容に興味を持たせるような序文ですが、完全な要約ではなく導入部ということです。

また、予定所要時間というものも最初に呈示しておくことが必要です。

 

テレビの番組構成を意識すれば、図解や映像を適切に使うことが聞き手の理解を助けることが分かります。

画像を作ってから原稿を書き直すことも必要です。

 

構成もさることながら、一つ一つの言葉の使い方、すなわち「日本語力」というものもなければ自分の言いたいことが伝わる前に相手の聞きたいという意欲を失わせます。

無意味な接続詞が連続しては興を失わせます。

「そして」「ところで」といった言葉を口癖のように入れてしまう人がいますが、これではかえって文章の論理性を損ないます。

「話は変わるけど」とよく言う人がいますが、これは相手をがっくりさせます。それまでの会話は何だったのかと一気に気持ちが冷めてしまいます。

「いずれにしても」という言葉も禁句のようです。話を強引に終わらせる重宝な言葉ですが、これは話をまとめようとしているように見えて、実際は話がまとまらなかったことを示しています。

 

あなたの話を聞いている人はどのような人なのか、それを分からないと本当は話もできないということです。

それを一所懸命に考えること、それが「相手への想像力」なのです。

 

わかりやすく〈伝える〉技術 (講談社現代新書)

わかりやすく〈伝える〉技術 (講談社現代新書)

 

 

 

「グルメサイトで☆☆☆の店は本当に美味しいのか?」嶋浩一郎、森永真弓著

スマホの急速な普及で多くの人々がネットを使う社会になってしまいました。

しかし、そのほとんどは疑問を抱えながらなんとか使っているのではないでしょうか。

この本はそういった多くの疑問点が少しでも理解できればと解説されています。

まあ、一つでも二つでも解決できれば良いでしょう。

 

食べログ」の評価は信用できるか。

格安携帯の仕組みは。

ネット通販の賢い利用法は。

「携帯電話の番号を入れて」と出てきたんだけど教えて良いのか。

コンビニで売っているプリペイドカードって誰が使うの。

なんで私のパソコンにはマンションの広告ばかり出て来るの。

すごい検索のやり方を教えて。

 

といった、誰もが持ちそうな疑問に答えています。

私もこういった事は漠然とは分かっていても詳細は分かりませんでした。

 

グーグルでの検索で自分に必要な(ような)情報が優先して出てくるのも、サイトの画面の中でCM欄にいつも同じようなものが出てくるのも、検索履歴の解析やクッキーの情報からプロファイリングされてのことだそうです。

それが嫌なら履歴の削除やクッキー削除ということはできますが、そうなると使い勝手もかなり悪くなるわけでどこまで認めるか悩ましいところでしょう。

 

いつも使っていたSNSやフリーメールなどで「携帯番号を入力して」などと出ることがありますが、これはセキュリティー向上のために実施していることだそうです。

不正アクセスを防ぐために必要なことなんだそうですが。

でも、それも逆に利用されるようなこともありそうですが。

 

ヤフーニュースなどのネットニュースはそこに記事を書く人が居るわけではなく、他のニュース源から引用したものをまとめるだけです。

ニュース源に対してはページビュー(PV)によって広告収入アップというビジネスモデルが出来上がっているようです。

ただし、PV次第というモデルには欠点もあり、そればかり狙うサイトもあるようです。

よくニュースページにある例では、一つの記事がいくつにも分割してあり、次に進むごとにPVが増えるという仕組みもあるとか。

 

もうあっという間にこういった経済の仕組みが出来上がってしまったということは分かりました。

それが良いかどうかは分かりませんが。

 

グルメサイトで★★★(ホシ3つ)の店は、本当に美味しいのか?

グルメサイトで★★★(ホシ3つ)の店は、本当に美味しいのか?

 

 

トランプは何もかもぶち壊してしまうつもりなのか。エルサレムの首都認定

アメリカの議会でかつてイスラエルの首都がエルサレムと認めたことがあり、これまでの大統領はそのあまりにも大きな影響を怖れて棚上げしていたものを、とうとうトランプは実行すると宣言しました。

www.tokyo-np.co.jp当然ながら、パレスチナを始めイスラム各国は大反発、また戦争の危機です。

 

北朝鮮でも、「北の挑発を抑える」と言いながら、数々の「挑発発言」そして大規模な軍事演習と、自分の方がよほど挑発をエスカレートさせています。

 

上に引用した東京新聞記事の表題にもあるように、トランプに「戦略」があるとは思えません。実際に戦争勃発となっても自らそこに参戦するだけの準備も構想もないでしょう。

 

この件に関し、参考にさせていただいている内田樹さんの「研究室」に面白い記事が載っていました。(もちろん、内容が”面白い”わけではありません。どちらかと言えば”怖ろしい”話です)

http://blog.tatsuru.com/2017/12/06_1030.php

記事の表題は「王の狂気」

トランプは何らかの精神的疾患を抱えているという見解を発表する精神科医がアメリカには何人も出ているそうです。

 

彼の「奇矯」としか言いようがない行動は、それが超大国アメリカの大統領であるために怖ろしい結果を生む可能性があります。

ロシア疑惑での逆境が強まるほど、その行動は危険になりそうです。

 

そして、それは世界で唯一とも言える「トランプのお友達」にも深く影響を及ぼさざるをえないことです。

両方共速やかに退陣といかないものでしょうか。

 

 

FOOCOM.NET専門家コラムより「低炭水化物ダイエットを通して見つめる世界の食事情」児林聡美さん

よく拝見して参考にさせていただいている、FOOCOM.NETの専門家コラムに、東大で栄養疫学を研究していらっしゃる児林さんが「低炭水化物ダイエット」にまつわる話を書いています。

www.foocom.net「低炭水化物ダイエット」とは、普通は「低糖質ダイエット」と呼ばれることが多いようですが、穀物などの糖質食品を制限して肉類などのタンパク質を摂取することでダイエット効果を上げるという行為のようです。

 

その効果は、記事の前半に書かれているように、様々な研究結果から見ても特に「糖質制限」がその他の食品摂取を制限することと比べて特に優れた効果をもたらすということはないようです。

 

しかし、記事後半ではこの「炭水化物摂取割合の高いこと」がいくつかの疾患罹患の割合を増やすという大掛かりな調査結果について書かれています。

 

Dehghan Mという方たちの発表した論文で、世界18カ国の低所得国から高所得国までで、摂取食品の栄養的な構成と各種疾患の発症割合が関係するかどうかを調査したもので、対象は35歳から70歳までの13万人あまりという大掛かりなものでした。

 

Associations of fats and carbohydrate intake with cardiovascular disease and mortality in 18 countries from five continents (PURE): a prospective cohort study. Lancet 2017; [Epub ahead of print].

 

この結果を見ると、炭水化物摂取割合が多い人たちは死亡率も高く、循環器疾患罹患率も高いということが読み取れるようで、これを見て低糖質ダイエット推進をする人たちはその科学的根拠が得られたと喜んでいるようです。

 

ただし、児林さんによると栄養疫学的に見てこの論文の解釈はどうやら簡単なものではないようです。

 

まず、得られた数字の解釈として、

左の死亡率が上昇しているのは、炭水化物からのエネルギー摂取割合がおよそ65%を超えたあたりからですし、右の循環器疾患の発症が上昇しているのは、75%を超えたあたりからです。
 日本人の現在の炭水化物からのエネルギー摂取割合は平均するとおよそ58%です(文献3)。
 また、日本人の食事摂取基準(文献4)では、元々炭水化物からのエネルギーの摂取割合を50~65%にしましょうと定められており、その範囲では影響はないことが分かります。
 死亡率や循環器疾患の発症に関して、多くの日本人は、現状の摂取状況より少ない割合にする必要はなく、それをはずれていても食事摂取基準を目指して改善すればよいわけです。

ということがあり、そもそも現在の日本人の栄養摂取傾向から見ればはるかに高い炭水化物摂取量での傾向であり、ほとんど参考になる数字ではないということです。

 

さらに、もう一つは観察期間中に亡くなった方々の死因について、特にアフリカ諸国での死者は感染症によるものが多く、これは栄養状態の不良という問題が関わっており単に炭水化物摂取割合の影響とは言えないもののようです。

また、「炭水化物摂取割合が多いということは、貧困や十分な医療サービスを受けられないことと表しているからかもしれない」ということで、これは貧困者が特に肉類などが高価でそれほど食べることができないということ、さらにそういった人々は十分な医療を受けられないので死亡率が高いことを表しているだけだという疑いが強いという疑問です。

 

このように、児林さんがここでこの例を引いて説明しているのは、栄養疫学的な解釈というものが様々な背景を考慮しないととんでもない間違った結論を出してしまうということでしょう。

 

ただし、このような欠点と危険性はあっても疫学的研究というものは重要な結論を引き出す可能性は秘めているということだと思います。