爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「リスクの世界地図」菅原出著

世界のあちこちで緊張が高まり、犯罪の危険性も増加しています。

観光旅行にも大きなリスクがあるのですが、それ以上に問題なのがビジネスで出けたり滞在したりする場合で、そういった人々が犯罪などに巻き込まれることも多発しています。

 

少し前の事件ですが、2013年にアルジェリア天然ガス開発施設で起きたテロ事件では日本のプラント会社日揮の社員など多数の人々が殺害されました。

しかしあまり知られていないことかもしれませんが、当時そのプラントには他国の派遣員も数多く働いており、イギリスのBP(ブリティッシュ・ペトロレアム)からの社員も多数いたものの、犠牲になった割合は少なかったようです。

BP社は自社のセキュリティー体制については一切明らかにしていませんが、生き残った社員から証言を集めることによりその一端を知ることができます。

 

BP社はこのような危険地域に社員を派遣する場合には周到な訓練を施し、詳細を定めたマニュアルを叩きこみます。

この事件の際も水を持ってあらかじめ決められた秘密の場所に隠れたがそれはマニュアルに従ったと話しているそうです。

そして英国政府もこの状況をすぐ把握したのですが、何人のイギリス人が隠れているか(行方不明か)などは一切公表しませんでした。

この発表をテロリスト側も見ることは承知の上です。もしも何人かが隠れているとテロリストが知れば徹底捜索をするからです。

日本政府は馬鹿正直に「行方不明の日本人が何名、安否確認ができたのが何名」などと公表していました。

 

BP社は大型プラント現場には「事業連絡調整官(OLC)」という肩書のセキュリティ専門家を置いています。

これは、アルジェリア政府の方針でそのような現場には外国人はセキュリティ業務には就かせないとしているためで、他の名目としているのですが、それでも実際の業務はセキュリティ・マネジャーそのものです。

日本企業はそういった役職の専門家は置かず、現地の警備会社にすべてお任せといったものですが、その能力は低く危ないもののようです。

たとえ現地政府との軋轢を生じたとしても「自分の身は自分で守る」という姿勢は必要なことでしょう。

 

本書後半では世界各国のリスク状況を詳しく説明しています。

ただしこの本の出版は2014年ということで10年前の情報となってしまっていますが、どうも見たところその当時からリスク状況が悪化したところは数多いようですが、逆にリスクが減少したと言えるところはどうやらほとんど無いようです。

観光客などが行くようなところではないのかもしれませんが、ビジネスであれば長期滞在もあるのでしょうか。

とにかく強盗などはまだ軽い方?、誘拐、殺人、レイプなど凶悪犯罪が日常茶飯事という地域がかなり広いということでしょう。

なお、取り上げられている地域は、中東、アフリカ、中南米、東南アジア、南アジア、中国、ロシアというところですが、触れられていないヨーロッパ、北アメリカも相当危なくなっているようです。

やはり日本から出ない方が良いのでしょう。