アメリカのサブプライムローンの破綻に始まったグローバル恐慌は世界的に広がりました。
2008年9月に投資銀行のリーマン・ブラザーズ社が破綻して以来、この恐慌自体をリーマン・ショックと呼ぶようになりました。
この本は経済学者の浜矩子さんがその直後の2009年1月に出版したもので、この恐慌についてその原因からそこに至る歴史的な要因、さらに各国の対応から将来の見込みについてまで詳しく解説しています。
恐慌の直接の原因となったのは、住宅ローンのサブプライムローンという不自然な方式が当然のように破綻に至ったことに始まります。
しかしそのサブプライムローンが金融工学という手法により証券化され細分化されていたために多くの投資会社、金融機関が巻き込まれ、それが世界的に広がっていたために世界中が一瞬の間に恐慌となりました。
アメリカ政府はリーマン社は救済をせずにつぶれるままにしましたが、その次にAIGという世界最大の保険会社が危機となった時には救済に踏み切りました。
リーマン社と比べてその破綻はあまりにも影響が大きすぎると考えたからでした。
このような対策のふらつきはアメリカばかりではなく世界各国で見られました。
多くの破綻会社が国の救済を受け、国有化されました。
日本はすでにあのバブル崩壊とその対策という経験を積んでいたにも関わらず、このグローバル恐慌への対応はお粗末なものでした。
浜さんの記述は「恐慌」というものの歴史にも及びます。
最初の恐慌ともいえるのがオランダのチューリップバブルとその崩壊、さらにイギリスの南海泡沫事件でしたが、それらはまだ資本主義の段階ではなく、カネだけの問題ともいえます。
しかしその後資本主義特有の景気循環と恐慌のサイクルが発生するようになります。
1929年のニューヨーク証券恐慌に始まる世界大恐慌がその最大のものでした。
その後、管理通貨制度が発達しこのような恐慌はもはや発生しないかのように思われていました。
しかし、このグローバル恐慌はそのような管理通貨制度が機能している中で発生してしまいました。
どうやら、かつてのチューリップバブルの時のように「カネとモノとの乖離」に再び落ち込んでしまったかのようです。
その状況では管理通貨制度があるから恐慌に陥らないとは言えず、逆にそれだからこそ起きる危険性があるかのようです。
各国の対策とその成果に関しては、本書はまだ結果が出ていない段階であるために予測しか書かれていません。
しかし一応の回復は見られたということである程度の成果は見られたのでしょう。
ところがそれ以降の状況はコロナ禍や戦争の影響もあるとはいえ、また危険な状態になっているようです。
浜さんの現状分析はどうなっているのでしょうか。