爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「空気と人類」サム・キーン著

空気というものの重要性は現代人であればほとんどの人が知っているでしょう。

しかしちょっと昔には誰もそれを想像もできませんでした。

そのような空気というものについて、様々な方向から語っていきます。

 

地球の大気というものも地球誕生以来変わり続けてきたのですが、そこをまず解説しています。

さらに大気に含まれる成分も窒素をはじめ多種類なのですが、それを明らかにしてきた多数の科学者たちの努力にも触れています。

また気体を使う技術も徐々に進歩し、人類の暮らしを変えてきました。

そちらの方向でも詳しく解説します。

最終章では、大気にばらまかれた放射性物質、そして大気の成分や動きが変わることで起きる気候変動にまで触れ、地球外の異星の大気で終わります。

 

大気中に最も多く含まれる窒素ですが、それを利用することは難しくなかなかうまくいきませんでした。

それを打開したのがハーバー・ボッシュ法でした。

大気中の窒素から直接アンモニアを作り出す化学合成法であり、これを可能としたことで食糧生産のための肥料を安価に大量に作り出すことができ、人類の人口増加を可能としました。

この方法を生み出した二人については、他書でも多くが書かれていますが、ハーバーがアルベルト・アインシュタインの就職を世話し、政治的立場は正反対だったものの親友となったということは知りませんでした。

 

大気中の多くの放射性物質を放出した核爆弾については詳しく語られています。

核爆弾を最初に使用したアメリカは、その危険性について故意に矮小化しようとしました。

放射能などは大した危険性はないと宣伝しており、それは現代まで影響を及ぼしています。

実際に核爆発で日本の市民を殺害したばかりではなく、核兵器開発中には多くの研究者や作業者を被ばくさせ、ビキニ環礁などでの核実験でも放射能の影響を軽く見たために住民や漁業者を被ばくさせ殺害しました。

ビキニ環礁での核実験の際には多くの動物を船に乗せて爆発地域に置きその被害状況を見るという非道徳的なことをしたのですが、その中で一匹だけ豚が生き残ったそうです。

そのことを放射能の影響は小さいという宣伝にして報道されました。

しかしその豚はその後体重270㎏まで膨れあがりわずか4歳という著しく早い死を迎えたそうです。

 

話題が非常に広い範囲に動き回るという、博学な著者にありがちな傾向が強く、読んでいるうちにどこに行っているのかわからなくなるほどでした。