爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「体育会系 日本を蝕む病」サンドラ・ヘフェリン著

「体育会系」という、書名の言葉を見るだけで著者が何を言いたいのか分かるようなきがします。

もちろん、言わずと知れたあの大学などでの「本格的」運動部や応援部などに見られるような体質のことを表しています。

 

著者のサンドラさんは日独ハーフで学校教育はドイツで受けた後日本にやってきたという経歴ですので、特に学校で見られるような「体育会系」の風習というものには非常に敏感に反応したようです。

 

こういった雰囲気はもちろん学校の運動部だけにあるものではなく、日本の社会の隅々にまではびこっているのですが、それを「体育会系」と表すことで誰もが同じようなイメージを持てると考えての命名でしょうが、上手い表現と言えるでしょう。

 

ブラック企業と言われるような、労働基準法などどこの話かと思うようなものも、このような体育会系の学校で教育されてきた若者があまり疑問も持たずに入ってしまい、そのまま体を壊すまで勤め続けるということがあるということです。

 

著者の受けたドイツの学校教育から見ると、日本の学校というものは驚くほどの状況です。

あの「ピラミッド」などの組体操では、次々と多数の死傷者が出ているにもかかわらず、いまだに運動会の山場として実施する学校が後を絶ちません。

そこには「皆で力を合わせて成し遂げる」ことで「感動を得る」といったことを求める教員が居り、怪我をするのも打ち込み方が足りないからだと言わんばかりの指導です。

それこそがまさに「体育会系」だとしています。

 

企業もブラックとまでは言われなくてもそういった体質があるところがほとんどです。

社内の公用語を英語としたという有名企業にはサンドラさんの知人も勤めていたそうですが、外国人も多い社員たちに週末は「踊りの練習」のために出社を強要していました。

年末の忘年会で余興として行うための踊りだそうで、女性は肌も露わな衣装で踊らせるということで、もしもイスラム教徒の女性社員がいたらどうするつもりなのでしょう。

こんな会社で公用語が英語などと言っても何の意味もないようです。

 

女性の働き方についても、欧米の感覚では到底理解できないようなことが多すぎて、特に女性外国人にとっては日本企業はほとんど働こうという気になれないところになっているようです。

専業主婦というもの自体、ドイツでは今ではほとんど存在しないようなのですが、日本人の多くはそれを善とする価値観を持つように仕向けられているようです。

 

日本では今の若者たちを「ゆとり世代」などと言って批判することがありますが、それを言うならドイツ人などはすべてがゆとり世代

会社員では有休は完全消化、学校の休暇は宿題など皆無で完全に勉強を忘れています。

しかしサンドラさんは母親が日本人だったために子供の頃でも家庭での学習をするという、ドイツでは珍しい習慣を身につけていました。

そこで、夏休みに何もやることがないからラテン語の勉強を家庭でしていたら休み明けの試験でトップの成績を取ったそうです。

社会全体が体育会系だと息詰まるようですが、自分一人だけがそうなら結構うまい汁も吸えるのかもしれません。