音楽好きな人、さらに自分でも演奏などを楽しんでいる人は多いでしょうが、もう一度音楽というものを「再発見」してもらいたいと、国立音大教授の著者が様々な音楽についてのエピソードを紹介しようという本です。
音楽そのもの、音楽と自然、音楽以外の諸芸術との関わり、時代・社会と音楽、音楽と人・人生といったテーマでいろいろな話題を提供しています。
西洋音楽というものが学校の音楽教育のほとんどを占め、その体系が絶対であるかのような状況ですので、音楽はすべて「ドレミファソラシド」で構成されているかのように思われがちです。
しかし、1オクターブを12に等分し、そこから8音を選んで並べたというのは多くの可能性の中からの選択に過ぎず、ミとファ、シとドの間が半音で他は全音であるというのも一つの例に過ぎません。
日本の音階、ファとシがない音階ももう一つの例で、歌いやすく簡単に演奏できるものです。
「蛍の光」もその音階でできていますが、もとはスコットランド民謡であったということで、もしかしたらこの五音音階の方が世界中で親しまれ、その後特殊な音階として現在の7音音階が登場したのかもしれません。
「ハ長調」のことを英語では「C major」と言いますが、ドイツ語では「C dur」(ツェー ドゥア)と言います。
日本語では「長い短い」と表現し、英語では「major、minor(大きい、小さい)」、そしてドイツ語では「dur、moll(硬い、柔らかい)」と表現します。
日本ではドイツやイギリスから西洋音楽が入ってきましたので、翻訳して「大調、小調」または「硬調、柔調」としても良かったのに、なぜ「長調、短調」としたのか謎です。
著者は音大の教授ですが、その学生を見ていて感じるのが「音楽で遊ぶ」ことができないということだそうです。
テレビで「ハモネプ」という番組があり、アカペラで音楽を楽しむというものですが、そこに出てくる若者たちと音大の学生を比べると、学生たちの方が音楽理論や演奏力ははるかに上ですが、音大の学生たちは即興演奏をするということがほとんどできず、音楽で遊ぶということとは無縁のようです。
その能力が必須と言うことではありませんが、音楽教育の課題というものがそこにあるようです。
私も一応音楽を楽しんではいますが、知らないことが多くありました。