爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「韓国の自己批判」崔青林著

昔から買って読んだ本はほとんど捨てないということをしており、時々かつて読んだ本を再読するということをします。

 

この本も1986年出版ということで、そのころに買ったものでしょう。

 

ただし、文芸書や歴史書などはそれほど価値が変わることはないでしょうが、社会学関係、特に経済書などは時代によって大きく変わってしまいます。

まったく読む価値が無くなっている本もありますが、この本の場合はかえって興味深い点がいろいろとありました。

 

著者の崔さんは当時は韓国の大新聞、朝鮮日報の経済部長という職にありました。

今はまた別の意味で日本をまともに扱わない韓国ですが、当時もきちんと向かい合おうという人は少なかったようです。

その中で、崔さんは日本を取材に訪れて多くの経済人などにインタビューをし、さらに台湾にも訪問して取材を重ね、当時の朝鮮日報の中で記事を書いていったそうです。

この本はそういった韓国国内向けの記事をまとめたもので、当時は国内でもかなりの売れ行きとなったそうです。

 

なにしろ、韓国は当時はまだ全斗煥大統領の軍部独裁政権下、光州事件が起きてからまだ間もない頃で、民主的な動きもこれからという段階です。

一方、日本はバブル景気が始まろうとしている最中、経済力は充実している段階でした。

さらに、台湾は米日などとは国交は断絶したものの、経済力は徐々につけてきており、当時でもGDPでは韓国を上回っていました。

 

本書に書かれている「韓国人に反省を促す内容」は、どこまで事実に近いものか判断はできませんが、昨今言われていることと大して変わらないようです。

とすれば、当時の状況から現在のかなりの経済大国になるまで、その反省をしないまま来てしまったのかどうか。

 

日本についても、「日本人の知らない日本のすごさ」は今でも言い続けている人が居るようなことですが、だからと言って日本の状態が良くなるわけでもなく、何やら虚しさが見えます。

 

というわけで、内容についてはさほど得るところはないのですが、時代の移り変わりを感じるという点では貴重なものであったとも言えます。