爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「敗者が変えた世界史 上」ジャン=クリストフ・ビュイッソン、エマニュエル・エシュト著

人類の歴史が闘争の歴史である以上、必ず勝者と敗者ができますが、それで「敗者が歴史を変える」というのはどんなものでしょう。

ちょっと当たり前すぎるというか、題名に凝りすぎというか、という感じがしますが、原著の題名は「Les grands vaincus de l'hisitoire」で、訳すなら「歴史上の偉大な敗者」、ちょっと「敗者が変えた」という語感とは違うように思います。

中身を見れば、たしかに「偉大な敗者」と言うべき人々の伝記であり、そちらの方が内容にもふさわしいものでしょう。

 

取り上げられているのは、ちょうど13人。

この上巻にはそのうちの6人が入っています。

ハンニバルウェルキンゲトリクスクレオパトラジャンヌ・ダルク、モクテスマ2世、ギーズ公アンリ1世。

ハンニバルクレオパトラジャンヌ・ダルクは誰でも名前は聞いたことがあるでしょうが、他の3人は極東の人間にとってはそれほど耳慣れたものではありません。

 

ウェルキンゲトリクスは現在のフランスにいたガリア人の首領で、カエサルガリア平定に強く抵抗した人です。

モクテスマ2世は現在のメキシコにあったアステカ帝国の最後の王で、スペインのエルナン・コルテスのわずか数百人の兵に国を滅ぼされました。

ギーズ公アンリ1世は16世紀のまだ混乱の続くフランスで、国王と肩を並べるほどの勢力を築きながら最後は殺されてしまいました。

 

ここに取り上げられた人々の中には、上手くやっていれば全く違った結果を出すことができた人も居ます。

しかし、それができなかったからこそ、敗者の列に名前を遺してしまいました。

ジャンヌ・ダルクに至っては、はるか後世の歴史家ジュール・ミシュレが奔走しなければその名も忘れ去られるところでした。

 

まあ、敗者の行動に教訓を得ようというのは、ほとんど益のないことでしょう。