爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「『移民』で読み解く世界史」神野正史著

著者の神野さんは塾の世界史講師の他、さまざまな歴史に関わる活動を幅広くされているようです。

その語り口は分かりやすく、ポイントを強調しダメを押すといった、受験生相手の授業を彷彿とさせるような印象でつながっていきます。

 

本書は、今の世界で非常に大きな問題となっている「移民」について、あくまでも移民受け入れというものは社会を破壊するものであり絶対に阻止すべきという立場から、歴史を振り返っていくというものです。

時には少々過激とも見える主張が見えます。

 

移民といっても、世界のあちこちに住む場所を探して移動するということであれば、人類が始まって以来延々と続けられてきたものです。

少しずつ意味が変わりますが、それらを言い表す言葉としては「民族移動」「植民」「強制移住」「難民」なども使われますが、いずれにせよ世界各地に住処を求めて移動するということには変わりません。

 

現代日本では、少子化による人口減少の危険性を声高に叫ぶ勢力が多く、その解決のためには世界から移民(期限付きなどと言っていますが、どうせそのような条件つけは不可能です)を引き入れようということも言われており、実際に政府の政策としても取り入れられようとしています。

 

著者は、そのような施策でその国自体の存続も危うくなった例を歴史から数多く紹介し、そのような策は亡国であると断言します。

 

歴史の始まりからずっと、多くの民族が各地を移動してきたのですが、その原因としてあげているのは「気候変動」です。

特に、何度も起きていた寒冷化は食料の調達にすぐに影響を及ぼし、少しでも食料の多い地域へ移動するという行動につながりました。

歴史に見られる民族移動とその移動先での王国・帝国の滅亡というものは、古代から世界各地で何度も見られたものです。

 

今生き残っている国々は、そのようにして移動してその先に居た民族を滅ぼし、自らはそこに昔から居たような顔をして占有しているだけです。

 

アメリカはその典型で、自分たちがヨーロッパを追い出されて新天地に逃れては、そこに昔から住んでいたインディアン(ネイティブアメリカン)を虐殺し追い出し、そこを自分たちの住処とすることは「人間の権利」として主張しながら、その後価値観や宗教が異なる地域から人がやってくると移民阻止と叫びました。

トランプがやっている露骨な移民阻止策は典型的なものですが、それ以前にも様々な阻止策をやり続けていたのがアメリカです。

 

それでは日本は今後どうするのか。

移民を受け入れることは絶対阻止しなければなりません。

社会と国家を崩し、まったく別の国にしてしまいます。

現在のような、「人口減少」の対策として移民受け入れなどというのは愚の骨頂です。

人口がどのような経過をたどってきたかを見れば、明治以降急激に人口増加した時の方が異常事態であると言えます。

現在の人口減少は自然の摂理と言うべきものです。

あのような「人口増加」こそが異常であり、今からはあるべき状況に戻っていくということです。

したがって「人口減少を前提とした社会制度」を作っていくべき時期であり、移民を受け入れるなどということは絶対にすべきではありません。

 

「移民」で読み解く世界史

「移民」で読み解く世界史

 

 いやはや、非常に強烈な主張でした。

しかし、「移民は絶対に排除」という点はともかく、「人口減少を前提とした社会に変えていく」という主張には私も同意します。

「人口増加が当たり前」のような社会というのはあくまでもこれまでのわずかな時期の特例にしか過ぎないというのが本当のように思います。

それは、「経済成長」が当たり前という現代の常識も同様でしょう。